タクロリムス(FK506)


検査部  
薬剤部(平成20年8月31日まで)   外注会社:SRL(平成15年4月1日より中止)


臨床的意義

 タクロリムスは、つくば市の土壌から分離した放線菌Streptomyces tsukubaensisが産生する23員環のマクロライド系化合物で、強力な免疫抑制作用を有する薬剤である。タクロリムスは比較的分子量が大きく(無水物として804)、脂溶性が高く、また本剤と結合する分子量12,000の生理的な結合蛋白が血中に存在すること、さらには移植手術を受け血中濃度が変動しやすい状態にある患者に投与されるため、特徴的な生体内動態を示すことが知られる。血中では主として赤血球中に局在する。本剤は現在、肝移植における拒絶反応の抑制、骨髄移植における移植片対宿主病の抑制ならびに腎移植における拒絶反応の抑制に対して保険適用を受けており、広く臨床応用されている。タクロリムスは移植医療において臨床的有用性を発揮しているが、移植の成否を左右する最も重要な因子は、本剤の臨床的有効血中濃度の維持であり、そのために血中濃度モニタリング検査が実施される。しかも種々の因子により本薬剤の体内動態が影響を受け、さらには臓器移植後に本剤の血中動態に影響を及ぼす薬剤がしばしば併用されることも多い。またタクロリムスは、導入時は持続静脈内投与、その後は経口投与されることが多いが、投与量は患者の体重を基準にして決定される。しかし、体重当たりの投与量が同じであっても本剤の吸収、分布、代謝、排泄などの個人差や食事による影響が大きいので、血中濃度は必ずしも一定しない。よって、本剤投与中の血中濃度モニタリングは不可欠である。薬剤の血中濃度の測定は、使用する測定法、その特異性や感度などに大きく影響を受け、また試料に血漿や血清を使用する場合はヘマトクリット値や検体分離温度などにも左右され、必ずしも正確な測定値が得られるとは限らない。さいわいにして、タクロリムスはそのほとんどの成分が赤血球中に存在し、よって薬剤濃度モニタリングが測定試料として全血を使用するので測定が容易となり、測定値の信頼性も高い。

測定法: 酵素免疫測定法

単位:ng/mL

測定試薬: フレックスカートリッジ タクロリムス TAC(改良試薬)(シーメンスメディカルソリューションズ・ダイアグノスティックス(株))(平成27年9月1日より)報告下限値 1.0ng/mL

フレックスカートリッジ タクロリムス TACR(シーメンスメディカルソリューションズ・ダイアグノスティックス(株))(平成27年8月31日まで)報告下限値 2.5ng/mL

測定機器:Dimension EXL 200(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社)(平成29年5月8日より)
       
Dimension Xpand Plus-HM(シーメンスメディカルソリューションズ・ダイアグノスティックス(株))(平成29年5月2日まで)

従来法との相関

平成29年5月8日
X=旧機器
Y=新機器
Y=1.07X-0.2 r=0.996  n=120

平成27年9月1日



平成20年9月1日


採取容器:紫(EDTA入り)2ml用

 

 

先頭に戻る    前ページに戻る