バンコマイシン, VCM (vancomycin)
薬剤部、外注会社:SRL(平成25年7月31日まで)

平成25年8月1日より検査部で測定

臨床的意義
 リコペプチド系抗生物質のバンコマイシン(VCM)は、MRSA感染症の治療薬として使用される。VCMは菌体壁合成阻害剤であり、複雑な構造式を有し、単一の化合物からなる。βラクタム剤とは作用機序が異なり、菌体壁合成酵素(PBPs)には結合せず、細胞壁を構成するペプチドグルカン前駆体(ムレインモノマー)のD-alanyl-D-alanineに強く結合して細胞壁の合成を阻害し、細菌の増殖を阻害する。VCMはβラクタム剤耐性のグラム陽性菌に対して抗菌作用を示す。しかしながら、分子量が大きいので、ほとんどのグラム陰性菌の外膜を通過できず、標的とする菌体壁前駆物質に到達できないので、グラム陰性菌には抗菌活性がない。検査の目的は治療効果を得るのに必要な薬剤血中濃度が得られているかどうかを調べるために測定される。また、VCMは腎毒性や耳毒性が副作用として知られており、腎機能の低下した症例では、薬剤の蓄積がみられるので、血中薬剤濃度測定によるdrug monitoringが必要である。

測定方法 : CLIA法

測定機器:Architect i2000 SR(アボットジャパン株式会社)

相関(平成25年8月1日)

y=0.923x-0.179  R=0.996(N=99)
 

副作用・中毒症状 
耳毒性、腎毒性、めまい、耳なり、腎障害、難聴

採取容器:普通試

変動要因 
腎障害↑、高齢者↑

検体採 取条件
・Peak値として点滴静注後1〜2時間後
・Trough値として次回投与直前
・凍結保存をする。 

半減期(h)
成人4〜6h,高齢者7〜10h,腎障害患者10h以上新生児6〜10h,乳児4〜5h,小児2〜3h

注意事項
消失半減期は年齢により大きく異なり投与計画の決定に血中濃度が参考となる。
治療濃度範囲はPeak時,Trough時の血中濃度が関係する。
腎機能障害者の血中濃度は半減期延滞のため上昇傾向がある。

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