国立大学法人 岡山大学 プレスリリース
岡山大学の公式サイト。
https://www.okayama-u.ac.jp/
2019-03-12
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リチウムイオン電池の充放電反応を超高速化-充電時間の短縮と高性能化への道を拓く-
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id604.html
◆要点1分未満の充電時間で電池最大容量の半分以上の充電を確認チタン酸バリウムのナノ粒子を担持した薄膜正極で電極反応を定量的解析担持物近傍の正極上にて電極副反応が抑制されることを発見 東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の伊藤満教授、安井伸太郎助教、物質理工学院 材料系の安原颯大学院生らは、岡山大学 大学院自然科学研究科 応用化学専攻の寺西貴志准教授、茶島圭介大学院生、吉川祐未大学院生らと共同で、ナノサイズの酸化物を表面に堆積させた正極のエピタキシャル薄膜を作製し、超高速での充電/放電時でも電池最大容量の50%以上の出力に成功した。
この特性向上の機構解明に取り組んだ結果、酸化物ナノ粒子の近傍に電流が集中し、リチウムイオンが電極-電解液界面を通過する際の抵抗が減少していることが分かった。さらに酸化物近傍の正極上では、副反応生成物であるSEIの生成が抑制されていることも発見した。従来のリチウムイオン電池の開発研究では種々の電極用粉末と電解質液体を使用して組み立てた電池を使用して行うため、電池を充電/放電する際に起きる電気化学反応を詳細に検討することが難しかった。本研究では単結晶薄膜を用いて電池を組み立てることにより、定量的な電気化学反応の議論を可能とした。
電子デバイスだけでなく電気自動車のバッテリーや大容量蓄電池への展開により、さらなる高性能化が要求されているリチウムイオン電池の分野では、超高速駆動化原理解明により当該分野の飛躍的な発展が期待できる。
研究成果は米国化学会紙「Nano Letters(ナノ・レターズ)」のオンライン版で電子版に2月13日(米国時間)に公開された。■論文情報
掲 載 紙:Nano Letters, 2019
論 文 名:Enhancement of Ultrahigh Rate Chargeability by Interfacial Nanodot BaTiO3 Treatment on LiCoO2 Cathode Thin Film Batteries
著 者:Sou Yasuhara, Shintaro Yasui, Takashi Teranishi, Keisuke Chajima, Yumi Yoshikawa, Yutaka Majima, Tomoyasu Taniyama, Mitsuru Itoh
D O I:10.1021/acs.nanolett.8b04690
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東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 教授
伊藤 満(いとう みつる)
TEL: 045-924-5354
FAX: 045-924-5354
岡山大学 大学院自然科学研究科 応用化学専攻 准教授
寺西 貴志(てらにし たかし)
TEL: 086-251-8069
FAX: 086-251-8069
2019-03-04
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テラヘルツ波ケミカル顕微鏡を用いた乳がん細胞の高感度検出に成功
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id605.html
◆発表のポイントテラヘルツ波を用いて、1ミリリットル中に含まれるわずか10個の乳がん細胞を高感度に検出することに成功。岡山大学が独自に開発した「テラヘルツ波ケミカル顕微鏡」を活用することで実現しました。がんの早期診断や治療薬の開発への貢献が期待されます。 岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科の紀和利彦准教授らと、ケベック先端科学技術大学院大学(INRS、カナダ)の尾崎恒之教授、カールトン大学(カナダ)のM. C. DeRosa教授、W.G. Willmore教授の共同研究グループは、テラヘルツ波(1テラヘルツ=1兆ヘルツの電磁波)を用いて、1ミリリットル中に含まれるわずか10個の乳がん細胞を高感度に検出することに成功しました。カナダのグループが開発したアプタマー(注3、特定の細胞を認識し、結合する物質)と岡山大学の開発した「テラヘルツ波ケミカル顕微鏡」の融合により、初めて研究が成功しました。
この成果により、がん早期診断に必要な新規がんマーカーの開発、新薬の開発に大きく貢献することが期待できます。
本研究成果は2月15日、欧州の科学雑誌「Sensors and Actuators B」のオンライン版に掲載されました。◆研究者からのひとことこの成果を機に、テラヘルツ波のさらなる医用応用の拡大を目指すとともに、岡山大学独自の技術のビジネス化・グローバル展開を目指します。紀和准教授■論文情報
論 文 名:High-sensitivity detection of metastatic breast cancer cells via Terahertz chemical microscopy using aptamers
掲 載 紙:Sensors & Actuators: B. Chemical Volume 287, Pages 595-601, 2019
著 者:E. M.Hassan, A. Mohamed, M. C.DeRos, W. G.Willmore, Y, Hanaoka, T. Kiwa, T. Ozaki
U R L:https://doi.org/10.1016/j.snb.2019.02.019
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岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科
准教授 紀和 利彦
(電話番号)086-251-8130(FAX)086-251-8130
2019-03-04
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手術後など炎症時における睡眠薬の使用には注意が必要!GABAA受容体機能が重要な役割
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id598.html
◆発表のポイント大きな手術後では炎症状態が認められます。そのような状況で睡眠導入薬を服用した場合、時間や場所がわからなくなる「せん妄」が高頻度で発症することが問題となっています。炎症によりGABAA受容体の機能が亢進し、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の作用が増強することを明らかにしました。本研究成果により、手術後における睡眠導入剤の適正使用への貢献が期待されます。 岡山大学病院薬剤部の北村佳久准教授・千堂年昭教授の研究グループは、全身炎症によりベンゾジアゼピン系睡眠薬の効果が増強されることを明らかにしました。本研究成果はオランダの学術誌「European Journal of Pharmacology」に2018年11月2日付けで掲載されました。
これまで、侵襲度が高い手術後にベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用した場合、せん妄の発症が高くなることは知られていました。本研究では、炎症を引き起こす薬物の投与により炎症を誘発した動物を用いて検討した結果、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の睡眠効果が増強し、その作用にはGABAA受容体機能の亢進が関与することを明らかにしました。本研究成果により手術後における睡眠導入剤の適正使用への貢献が期待されます。◆研究者からのひとこと 手術後の安全な薬物使用の推進は薬剤師の重要な仕事です。その中で、せん妄の発症には睡眠導入剤が影響していることは明らかになっていました。その病態メカニズムを明らかにすることは手術前から手術後にかけての適正な薬物治療につながっていきます。北村准教授■論文情報
論 文 名:Influence of lipopolysaccharide on diazepam-modified loss of righting reflex duration by pentobarbital treatment in mice.
掲 載 紙:European Journal of Pharmacology
著 者:Yoshihisa Kitamura, Shiho Hongo, Yoshiaki Yamashita, Shinpei Yagi, Kanami Otsuki, Akihisa Miki, Ayumi Okada, Soichiro Ushio, Satoru Esumi, Toshiaki Sendo
D O I:10.1016/j.ejphar.2018.10.049.
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岡山大学病院 薬剤部
准教授 北村佳久
(電話番号)086-235-7641
(FAX)086-235-7974
2019-02-21
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運転免許試験の奥行知覚検査(三桿法)には再現性があり、練習効果はないことを初めて示す
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id597.html
◆発表のポイント運転免許試験で行われている奥行知覚検査の「三桿法(さんかんほう)」の測定結果には再現性があり、練習効果は見られないことがわかりました。また、正常範囲の斜位の人では通常どおり検査できるが、複視がある人の場合には検査できないことを初めて示しました。今回の研究成果は、社会で実施されてきている検査が科学的に妥当かどうかを最新の科学によって検証でき、交通安全や医療における検査の面においてもとても大切なことです。 岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科(岡山大学病院眼科)の松尾俊彦准教授らの研究グループは、運転免許試験で行われている奥行知覚検査の「三桿法(さんかんほう)」の測定結果には再現性があり、練習効果は見られず、正常範囲の斜位の人では通常どおり検査できるが、複視がある人の場合には検査できないことを初めて示しました。
本研究成果は、2018年12月にアメリカの科学雑誌「Heliyon」に掲載されました。
三桿法は、1960年にわが国で制定された道路交通法の施行規則で実施が決められています。それ以降60年近くにわたって大型自動車やタクシーなどの運転免許の視覚(深視力)試験として実施されてきました。法律に基づいて実社会で行われている検査を科学的に検証した一例になると期待されます。◆研究者からのひとこと 岡山大学病院や僻地病院で眼科診療をしていますと、運転免許が更新できる視力があるかどうかで受診される方が多くいらっしゃいます。特に高齢者では視力は基準を満たしますが、車の運転は「見て、認知して、判断して、手足を動かす」という過程が大切な中、反射が落ちているので運転を止めた方がいいと話すこともあります。普通免許では求められない三桿法の検査では、「見て、認知して、判断して、手足を動かす」という過程があるので、大型などの免許の視覚検査としては適切なのではと思います。松尾 准教授■論文情報等
論文名:Three-rods test as drivers" license vision test from the viewpoint of reproducibility, eye deviation, and functional visual acuity
掲載誌:Heliyon
著者: Toshihiko Matsuo, Yuki Morisawa, TakeshiYoshinaga, Mari Ikebe, Ryosuke Hosogi, Chie Matsuo.
DOI: https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2018.e01056
発表論文はこちらからご確認できます。
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運転免許試験の奥行知覚検査(三桿法)には再現性があり、練習効果はないことを初めて示す
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岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科(岡山大学病院眼科)
准教授 松尾俊彦
(電話番号)086-251-8106
(FAX番号)086-251-8106
2019-02-21
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室温下、不活性なメタンを選択率94%でメタノールに変換―メタノール経済社会構築にもつながる新しい発見―
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id599.html
◆発表のポイント難酸化反応として知られるメタンの活性化(酸化)を室温で行い、94%の選択率でのメタノールの直接合成に成功しました。ゼオライト(無機化合物)中にイオン交換した亜鉛(Zn)イオンを活性点として、一般には不安定なZn-O•ラジカル種を創出したことが特徴です。エネルギー問題解決への指針となる可能性が示唆されます。 岡山大学大学院自然科学研究科客員研究員(JSTさきがけ研究員)の織田晃博士、同研究科の大久保貴広准教授、黒田泰重特任教授らの研究グループは京都工芸繊維大学の湯村尚史教授、小林久芳名誉教授らのグループと共同で、亜鉛イオン交換ゼオライトを利用することによって、室温という温和な条件下で反応不活性なメタンを活性化することによってメタノールを直接合成することに成功しました。本研究の成果は米国化学会(ACS)誌「Inorganic Chemistry」のSupplementary Cover Arts の論文の一つとして1月7日、同誌のオンライン版に掲載されました。
酸素によるメタンの酸化反応は化学分野の難酸化反応の一つとして知られ、室温でのその活性化によるメタノールの合成は化学者にとって“夢の反応”の一つです。本研究では、天然にも存在し、洗剤などにも利用されているゼオライトという無機化合物に対して、よく知られている亜鉛イオンをイオン交換してこの試料を処理し、ラジカルであるZnO・(オキシル種)を創出した後、その種を活性点としてメタンからメタノールを室温で合成しました。
本研究により、メタンからメタノールを室温で合成可能な無機材料開発への指針が与えられます。このような研究によって、メタンからメタノールの室温合成が可能となれば、エネルギー問題解決への貢献も期待できます。◆研究者からのひとこと 本研究はJSTさきがけ研究員の織田晃博士が10年ほど前(理学部4年生時)に見いだした現象がやっと日の目を見た研究成果です。その間に合計13報の論文が採択されました。一連の研究は今回のメタンの活性化を室温で行うという新規な方法の発見へとつながる画期的な研究成果となりました。彼は、この長い研究期間にストレスで酒を飲み過ぎ、こけて、骨折するなどの大事件も経験しました。一方でこの間に、仁科賞・研究科長賞の受賞や学振DC1、PDへの採用、さらにさきがけ研究として採択、さきがけ研究員(岡山大学自然研究科客員研究員)として採用などの栄誉を手にしました。また、2月1日付で名古屋大学に助教として採用されました。岡山大学で“世界に誇れる”研究ができることを示してくれました。これからのさらなる活躍を期待しています。織田研究員黒田特任教授■論文情報
論 文 名:Room-Temperature Activation of the C–H Bond in Methane over Terminal ZnII–Oxyl Species in MFI Zeolite: A Combined Spectroscopic and Computational Study of the Reactive Frontier Molecular Orbitals and Their Origins
掲 載 紙:Inorganic Chemistry
著 者:Akira Oda, Takhiro Ohkubo, Takashi Yumura, Hisayoshi Kobayashi, and Yasushige Kuroda
D O I:10.1021/acs.Inorgchem.8b02425
U R L:http://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.Inorgchem.8b02425
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室温下、不活性なメタンを選択率94%でメタノールに変換―メタノール経済社会構築にもつながる新しい発見―
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岡山大学大学院自然科学研究科(理学部化学科)
特任教授 黒田 泰重
TEL: 086-251-7844
FAX: 086-251-7853
2019-02-21
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抗炎症性脂質メディエーターを用いた新たな歯の根の治療法を開発
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id596.html
◆発表のポイント歯の根の先端に炎症を起こし顎骨を破壊する根尖性歯周炎は、治療(歯内療法)が技術的に難しく、高い再発率が世界的に問題です。抗炎症性脂質メディエーターのレゾルビンD2(注3)を用いた歯内療法を行うと、歯の根(歯根)の先の炎症を抑えるだけではなく、歯根の先端を閉鎖して顎骨を再生させることが分かりました。本研究成果は、これまでの歯内療法とは異なる革新的な歯内療法の開発・発展につながる可能性があります。 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野のYasir Dilshad Siddiqui大学院生・高柴正悟教授・山城圭介助教、岡山大学病院歯周科の大森一弘講師、岡山大学病院新医療研究開発センターの伊東孝助教(現厚生労働省)、米国Forsyth研究所のThomas E. Van Dyke教授らの研究グループは、抗炎症性脂質メディエーターの一つであるレゾルビン D2に歯の神経の病気である根尖性歯周炎の治癒を促進させる新たな効果があることを発見しました。根尖性歯周炎は歯の根の先端(歯根尖)に炎症を起こして顎骨を破壊する病気の一つで、その治療(歯内療法)は技術的に非常に難しく、高い再発率が世界的に問題となっています。
今回の研究成果は、ラットの根尖性歯周炎モデルを用いて、歯内療法時にレゾルビン D2を根管内に作用させたところ、歯根尖の炎症を抑えるだけではなく、歯根尖の石灰化を誘導し閉鎖することによって、失われた顎骨を再生させることが明らかになりました。本研究成果は、これまでの歯内療法とは大きく異なる革新的な歯内療法の開発・発展につながる可能性を示しています。
本研究成果は2月6日に、スイスの国際学術誌「Frontiers in Immunology」のオンライン版に掲載されました。◆研究者からのひとこと 本研究を進めるにあたって、たくさんの支援、そして助言をくれた高柴教授はじめ研究チームのメンバーに感謝します。さらなるメカニズムの解明を目指して、岡山大学、そしてパキスタン大学でも研究を続けていきたいと思います。(Yasir Dilshad Siddiqui)Siddiquiさん(左)高柴教授(右)
■論文情報
論文名:Resolvin D2 Induces Resolution of Periapical Inflammation and Promotes Healing of Periapical Lesions in Rat Periapical Periodontitis
掲 載 紙:Frontiers in Immunology
著 者:Yasir Dilshad Siddiqui, Kazuhiro Omori, Takashi Ito, Keisuke Yamashiro, Shin Nakamura, Kentaro Okamoto, Mitsuaki Ono, Tadashi Yamamoto, Thomas E. Van Dyke, Shogo Takashiba
D O I:10.3389/fimmu.2019.00307
<詳しい研究内容について>
抗炎症性脂質メディエーターを用いた新たな歯の根の治療法を開発
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岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
教授 高柴 正悟
(電話番号)086-235-6675
(FAX)086-235-6679
2019-02-21
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定例記者発表(2月)開催
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id595.html
本学は2月21日、教育・研究・医療の成果や社会貢献の取り組みなどをお知らせする定例記者発表を行いました。
今回の発表・お知らせ事項は下記のとおりです。
【研究紹介】インフラの長寿命化を実現する技術開発数値シミュレーションを用いた平成30年7月豪雨災害による河川氾濫シナリオの検討について【発表事項】細胞内での発現量に着目した、タンパク質の毒性の有無の定義法を確立―毒にならないタンパク質を知ることで、毒になるタンパク質を知る―「研究者のたまご」がひよこの有用遺伝子の作用機序を解明~換羽の仕組み解明や食の安全・安心につながる発見~ヒザラガイの「磁石の歯」形成に関わるタンパク質を同定―磁鉄鉱の環境に優しい合成法に生かせる可能性―病原細菌の感染と薬剤耐性の獲得に関わるS-S架橋形成メカニズム解明~病原菌を殺さずに無毒化する対感染症の新戦略~室温下、不活性なメタンを選択率94%でメタノールに変換―メタノール経済社会構築にもつながる新しい発見―
【資料提供】手術後など炎症時における睡眠薬の使用には注意が必要!GABAA受容体機能が重要な役割運転免許試験の奥行知覚検査(三桿法)には再現性があり、練習効果はないことを初めて示す抗炎症性脂質メディエーターを用いた新たな歯の根の治療法を開発がんと生殖医療ネットワークOKAYAMA研修会、不妊・不育とこころの研修会「がん患者と妊孕性温存」を開催岡山県『「気づく」「つなぐ」「支え合う」子ども虐待防止事業』「妊産婦のメンタルヘルス」研修会を開催社会文化科学研究科附属文明動態学研究センター共催国際シンポジウム「司牧と修道制:800〜1650年」開催
詳しい記者発表の資料についてはこちらをご覧ください。
【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
(電話)086-251-7292
2019-02-21
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病原細菌の感染と薬剤耐性の獲得に関わるS-S架橋形成メカニズム解明~病原菌を殺さずに無毒化する対感染症の新戦略~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id600.html
◆発表のポイント抗生物質に対する耐性菌の存在は医療の大きな脅威となっており、耐性菌の発生を防ぐため、病原菌を殺さずに無毒化する新しい対感染症戦略が求められています。病原細菌は、感染や薬剤耐性の獲得の際などにべん毛や繊毛といった巨大タンパク質構造物を使用しますが、それらを構築するのに必要な酵素DsbAについて、機能するメカニズムや、特徴的な深い溝構造を形成することを明らかにしました。多剤耐性の出現と拡散の根源的な解決に貢献することが期待できます。 抗生物質に対する耐性菌の存在は医療の大きな脅威となっており、耐性菌の発生を防ぐため、病原菌に淘汰圧をかけずに無毒化する新しい対感染症戦略が求められています。
病原細菌はべん毛や繊毛、毒素注入器(注2)などの巨大タンパク質構造物を細胞表面に構築して、宿主への感染、薬剤からの忌避、さらに薬剤耐性の異種間伝播に用いますが、その構築にはタンパク質分子内のシステイン残基間に正しくジスルフィド(S-S)架橋を作る仕組みが必要で、酵素DsbAがその役割を担います。岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)の田村隆教授は、DsbAの酸化力をチューニングするタンパク質工学の技術を開発して、酸化力の異なるDsbAを発現させた大腸菌によるFピリ(性繊毛)形成量を調査しました。その結果、DsbAが高い活性を発揮するための要件として、基質に結合する際に深い溝が形成されることを明らかにしました。この成果は2018年12月18日に欧州の国際学術誌「Biochimica et Biophysica Acta - Proteins and Proteomics 」のオンライン版に掲載されました。
本研究で同定されたDsbAの構造変化を製薬の標的とすれば、病原菌を殺さずに病原性因子を解体させることが可能になります。この発想は、社会的問題化している多剤耐性の出現と拡散を根源的に解決できると期待できます。◆研究者からのひとこと DsbA研究は2000年に着手した課題で、18年間の研究を経て1つの論文になりました。修論研究生5人と卒論研究生2人のリレーで継続してきました。データが蓄積するほど謎は深まり、立てた仮説がことごく打ち砕かれる期間が長く続きました。ある時、自分も含めてこの分野の研究者が見落としている巨大な溝が存在することに気づいたのです。そして岡山大学情報統括センターのスパコンを駆使して、実験の結果を説明できる溝形成の仕組みやその容積を明らかにすることができました。溝が出現する仕組みは病原菌を殺さずに無毒化させる「酵素の鍵穴」として役立つのです。 田村教授■論文情報
論 文 名:Redox-tuning of oxidizing disulfide oxidoreductase generates a potent disulfide isomerase
掲 載 紙:Biochimica et Biophysica Acta - Proteins and Proteomics
著 者:Shinya Sutoh, Yuko Uemura, Yuko Yamaguchi, Asako Kiyotou, Rena Sugihara, Makiko Nagayasu, Mihoko Kurokawa, Koreaki Ito, Naoki Tsunekawa, Michiko Nemoto, Kenji Inagaki, Takashi Tamura
D O I:doi.org/10.1016/j.bbapap.2018.12.005
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1570963918302140?via=ihub
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病原細菌の感染と薬剤耐性の獲得に関わるS-S架橋形成メカニズム解明~病原菌を殺さずに無毒化する対感染症の新戦略~
<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科
教授 田村 隆
(電話番号・FAX)086-251-8293・086-251-8388
2019-02-21
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細胞内での発現量に着目した、タンパク質の毒性の有無の定義法を確立 ―毒にならないタンパク質を知ることで、毒になるタンパク質を知る―
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id603.html
◆発表のポイント毒性のないタンパク質であっても、過剰に産生されると、他の重要なタンパク質の合成のためのリソースを奪うことで生体に害をなすことが知られています。これを利用して、「あるタンパク質が、細胞内でどれだけ作られると害をなすか」(限界発現量)を測り、比較することで、タンパク質の毒性の有無を明確に定義する方法を確立しました。タンパク質が毒をなすメカニズムの解明につながるとともに、タンパク質の過剰や蓄積により生じる病態の理解などに役立つことが期待されます。 本学環境生命科学研究科の守屋央朗准教授と江口優一大学院生らの研究グループは、出芽酵母のアルコール発酵に関わるタンパク質を対象に、どれだけ作られたら害をなすか(限界発現量)を測ることで、細胞内で過剰にした際に害にならならいタンパク質を明らかにしました。また、そのことから無害でない=害をなすタンパク質が明らかになり、害をなすメカニズムとして、代謝活性、細胞内局在、システイン残基を介した凝集があることを見いだしました。
本研究で、害をなすタンパク質を明確に定義することが初めて可能になり、今後タンパク質の過剰が引き起こす害についての理解が進むと考えられます。この知識は、がんや神経変性疾患などタンパク質の過剰や蓄積により生じる病態の理解や、細胞を利用してタンパク質を大量産生させる際に利用されると考えられます。本研究は、神戸大学と明治大学との共同研究により行われたもので、2018年8月10日に英国の学術誌「eLIFE」に掲載されました。◆研究者からのひとこと「細胞内のタンパク質が過剰になったら何が起きるのか?」を実験データと推理から明らかにするという頭脳ゲームを日々楽しんでいます。江口は筋トレに励み、筋肉タンパク質が過剰気味です。守屋准教授(左)と江口大学院生■論文情報
論 文 名:Estimating the protein burden limit of yeast cells by measuring the expression limits of glycolytic proteins (解糖系タンパク質の発現限界から見積もる酵母細胞のタンパク質負荷限界)
掲 載 紙:eLIFE
著 者:Yuichi Eguchi、 Koji Makanae、 Tomohisa Hasunuma、 Yuko Ishibashi、 Keiji Kito、 Hisao Moriya
D O I:10.7554/eLife.34595
U R L:https://elifesciences.org/articles/34595
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細胞内での発現量に着目した、タンパク質の毒性の有無の定義法を確立―毒にならないタンパク質を知ることで、毒になるタンパク質を知る―
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岡山大学異分野融合先端研究コア/大学院環境生命科学研究科
准教授 守屋央朗
(電話番号)086-251-8712(FAX)086-251-8716
2019-02-21
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「研究者のたまご」がひよこの有用遺伝子の作用機序を解明~換羽の仕組み解明や食の安全・安心につながる発見~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id602.html
◆発表のポイントニワトリ胚の羽の伸長を遅らせる遅羽性遺伝子は、初生ヒナの雌雄鑑別を容易化する有用遺伝子として養鶏で広く利用されていますが、その作用機序や、摂食時に健康に影響を与えるかどうかは不明でした。遅羽性遺伝子が、機能的なプロラクチン(ホルモンの一種)受容体量を変化させることで、羽の形成に影響を及ぼしている可能性を突き止めました。本研究は、フロンティアサイエンティスト特別コース生の「先取りプロジェクト研究」・「サイエンス・インカレ応募研究」として、理学部の支援を受けて実施されました。 理学部フロンティアサイエンティスト特別コース生の岡村彩子さん(生物学科4年生)とコース修了生の増本絢音さんは、大学院自然科学研究科分子内分泌学研究室の竹内栄教授らの助言と協力、広島大学日本鶏資源開発プロジェクト研究センターの都築政起教授、竹之内惇博士らの協力を得て実施した「先取りプロジェクト研究」・「サイエンス・インカレ応募研究」において、遅羽性遺伝子の作用機序の解明に成功しました。本研究成果は2018年12月27日、国際比較内分泌学会連合の機関誌「General and Comparative Endocrinology」のオンライン版に掲載されました。
ニワトリ初生ヒナの主翼羽の伸長には、生えそろうのが速い速羽性(野生型)と遅羽性の遺伝形質があります。計画的交配により、生まれてくるオスをすべて遅羽性に、メスをすべて速羽性にできることから、遅羽性遺伝子は雌雄鑑別を容易化する有用遺伝子として、養鶏において広く利用されています。しかし、この遺伝子が遅羽を引き起こす仕組みについては不明で、摂食時の安全性に影響を与えないかどうかの懸念もありました。本研究では、遅羽性遺伝子が胚での羽伸長を抑制する一方で、孵化後には羽伸長を促進することに着目し、遅羽性遺伝子の働きの詳細を解析しました。その結果、遅羽性遺伝子が機能的なプロラクチン受容体量を変化させることで、羽伸長速度を変化させている可能性が示唆されました。本研究成果は、羽形成や換羽の仕組みの解明、鶏肉の「食の安全・安心」につながることが期待されます。◆研究者のたまごからのひとこと クリスマスにはたくさんのローストチキンが食されます。「遅羽性遺伝子の働き方が分からないまま食べていて大丈夫なの?」と思ったのが、この研究を始めたきっかけでした。本研究では、鶏肉は大丈夫そうだという結論に達し、一安心しています。
研究生活では、早起きして実験に取り組んだりと大変なことも多いですが、実験データを基に仕組みを考えるのはとても楽しくウキウキします。大学院でも引き続き研究に励みたいと思います。岡村さん■論文情報
論 文 名:Changes in prolactin receptor homodimer availability may cause late feathering in chickens
掲 載 紙:General and Comparative Endocrinology 272 (2019) pp. 109-116
著 者:Ayako Okamura, Ayane Masumoto, Atsushi Takenouchi, Toshiyuki Kudo, Sayaka Aizawa, Maho Ogoshi, Sumio Takahashi, Masaoki Tsudzuki, and Sakae Takeuchi
D O I:10.1016/j.ygcen.2018.12.011
U R L:https://doi.org/10.1016/j.ygcen.2018.12.011
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「研究者のたまご」がひよこの有用遺伝子の作用機序を解明~換羽の仕組み解明や食の安全・安心につながる発見~
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大学院自然科学研究科(理学部)
教授 竹内 栄
(電話番号)086-251-7868
(FAX) 086-251-7876
2019-02-21