「歯科全身管理」とは

循環器疾患などの基礎疾患を有している場合、特に高齢者は歯科治療が大きなストレスと感じたり、痛みが生じた場合に、基礎疾患が急激に増悪すること(発作など)があります。そこで、基礎疾患増悪の兆候を早期に察知するために、歯科治療中は血圧、脈拍、呼吸などのモニタリングを行い、注意深く全身状態を観察し、把握する必要があります。これが「全身管理」です。さらに、基礎疾患が増悪してしまった場合でも、即座に救急処置を行い、その後、必要に応じて専門診療科と連携して、安全を確保できるよう万全の体制を整えています。

適応

内科的に基礎疾患がコントロールされていることが、歯科治療の十分条件です。内科での定期的な治療を受けられていても、下記の状態である場合、歯科治療に際しては、専門的な全身管理が必要です。

1.循環器疾患(心疾患、不整脈、高血圧など)
 1)日常生活で息切れや胸部痛などがあり、内科主治医より、運動の制限を指示されている
 2)日常生活で突然の心臓の発作があり、発作時に意識低下または消失があったり、発作時に加療が必要である

2.呼吸器疾患(喘息、肺気腫など)
 1)重篤な喘息発作がある
 2)鎮痛薬などで喘息発作が誘発される(アスピリン喘息)
 3)常時酸素吸入をしていても、呼吸困難がある

3.内分泌・代謝疾患(糖尿病など)
 1)インスリンコントロールが不良で、日常生活で低血糖になりやすい
 2)内分泌異常に伴う発作があり、その際、意識障害や循環不全に陥ってしまうことがある

4.アレルギー
 1)局所麻酔薬などの歯科で使用される薬物のアレルギーがある
 2)歯科材料または医療材料によるアレルギーがある
 3)その他、歯科治療に関連したアレルギーがある、または疑いがある

5.その他:
 かかりつけの内科などで、歯科治療時には血圧、脈拍、呼吸などのモニタリングが必要である、または特別な管理が必要であると指示されている

方法

1.歯科治療前(初診時)評価:問診、検査、照会により、基礎疾患の重症度を評価します。
2.歯科治療中管理:血圧計や心電図などのモニターを装着し、歯科治療中の全身状態を把握しながら安全な歯科治療を行えるようサポートします。
3.救急処置:歯科治療時のストレスにより、基礎疾患が急激に増悪してしまった場合(発作など)、即座にその場で救急処置を行った後、必要に応じて専門診療科に診察していただきます。

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