本園は昭和53年4月薬学部附属施設として設置され薬用植物の標本園,研究材料の栽培園として教育・研究および社会貢献に資する施設として活動してきた.
現在薬用植物約500種の維持,育成を行っており,それらは薬学部の授業および実習のみならず,岡山大学唯一の植物園として他学部の教育,研究でも利用されている.
社会貢献の一環として,平成14年度以降,春と秋に薬学部公開講演会(薬学部社会連携部会)と同時に一般公開を行っている.
また,高大連携の一環として高校生の大学訪問およびオープンキャンパスの際には,植物園を公開,案内している.
さらに平成12年度からは薬剤師研修センターからの依頼を受け,漢方薬・生薬認定薬剤師の植物園実習の受入れを行っており,薬剤師の卒後教育にも貢献している.
近年,わが国の疾病には,病因の特定できる感染症から自己免疫疾患,高血圧,老人性痴呆やアレルギー疾患等病因の特定が困難な全身的疾患への質的変化が みられ,漢方薬をはじめとする伝承薬への関心が高まりつつあり,医薬品素材と しての薬用植物の需要は急激に増大している.
一方では,環境汚染,森林開発, 乱獲などによる天然資源の減少が地球的規模で憂慮されており,薬用植物の保護,確保ばかりでなく,栽培育種,品質管理ならびに新しい医薬品素材の探索など の研究が今後,ますます重要な課題となり,個々の大学の薬用植物園のより一層 の活動もさることながら,他の大学,企業,国内外の公共機関との緊密な連携に よる活動が望まれる時代となってきている.これら社会的要請に応えるためにも 種々の面での薬用植物園のより一層の整備に心がけ,自立した施設として,薬学 教育,研究の機能を果たすよう努力することが必要であろう.