岡山大学 農学部

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【プレスリリース】DNA解析によりスズメバチの多様な食餌の習慣が明らかに―蜂飼育者の餌選択における経験知に科学的裏付け―

2025年05月23日

 神戸大学大学院人間発達環境学研究科の佐賀達矢助教と岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の藤岡春菜助教は、長野県や岐阜県などで「蜂の子」として広く食べられているシダクロスズメバチが、鳥類や哺乳類を含む脊椎動物を捕食していることをDNA解析により明らかにしました。
 これらの地域では、蜂を捕り、飼育し、食べる文化が根付いていますが、餌に関する実態ははっきりと分かっておらず、また人間によって飼育された蜂と野生で採取された蜂の食性の違いはほとんど知られていません。そこで、野生巣と飼育巣において蜂の餌生物種を DNA メタバーコーディングで解析したところ、昆虫・クモ・鳥類・哺乳類・両生類・爬虫類・魚類など計 324 種の餌生物が同定されました。また、飼育巣と比較して、野生巣では野生の脊椎動物の餌の多様性が有意に高いことも明らかになりました。これは、人間が供給する肉(鶏肉や鹿肉など)で飼育することが、自然な採餌を一部置き換える可能性を示唆しています。
 さらに、飼育経験者の餌生物種の認識および味覚評価との関連をアンケート調査した結果、多くの蜂飼育経験者が野生下で蜂が脊椎動物を食べているのを目撃した経験があり、地域の愛好家たちが学術的な知見に先んじて、自らの経験や知識によって鳥類や哺乳類を飼育時に餌として与えていたことの妥当性をDNA解析から証明しました。また、飼育経験がある回答者ほど野生産と飼育産で味に違いがあることを認識しており、その理由は、与えられた餌の違いが挙げられました。
 本研究は、地域に根ざした昆虫食文化の合理性と知識体系の一端を明らかにするものです。また、「蜂の子」を貴重な食料資源として持続的に利用するために、科学に基づく学術研究と、愛好家による飼育戦略や文化的慣行との間で知見を往還させることで、「蜂の子」に関する食文化および飼育文化を洗練させていくことの重要性も示しています。
この研究成果は、5月14日に「Journal of Insects as Food and Feed」に掲載されました。

詳細は、下記リンク先をご覧ください。

参照リンク

https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1385.html

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