岡山大学 農学部

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大月純子准教授が「世界体外受精会議記念賞(臨床)」を受賞

2018年08月20日

 生殖補助医療技術教育研究センターの大月純子准教授が第36回日本受精着床学会総会・学術講演会において「胚発生過程における細胞分裂失敗頻度とICSIおよび滑面小胞体凝集塊(smooth endoplasmic reticulum cluster: sERC)との関連性」という演題で発表し、世界体外受精会議記念賞を受賞しました。本学会は生殖医療に携わる産婦人科医、泌尿器科医、生殖発生生物学研究者および胚培養士を中心とした本邦の生殖医療分野で最も大きな学会の一つであり、本賞はかつてこの学会が世界体外受精会議を同時主催した際に設立された記念基金によって、生殖医学・医療の発展に寄与しうる優れた学術報告を表彰するために設けられた賞です。

 世界初の体外受精児の生誕から40年が経ち、晩産化、少子化が問題となっている本邦では19人に1人が体外受精にて生まれており、生殖補助医療技術の重要性が益々高まる反面、染色体異常を伴わない原因不明流産は自然妊娠に比べて高率、死産率も自然妊娠の4倍であることが報告されており、原因究明が必須です。

 滑面小胞体凝集塊はヒト卵母細胞に現れる異常形態の一つで、ヒトとチンパンジーの卵母細胞以外で出現報告がないことから、動物実験が不可能であり、研究が非常に困難でした。この異常形態を有する卵由来胚の移植によって異常児の出産や妊娠率低下が報告されている一方、健常児も生まれていることから、滑面小胞体凝集塊を有した卵由来胚の移植に関しての議論はあるも、より安全な生殖医療を行うことが常に求められています。

 本研究において、滑面小胞体凝集塊を有する卵では受精後の第二減数分裂、胚発育時の細胞分裂失敗頻度が有意に高いこと、また通常の体外受精に比べ、顕微授精を行った場合は受精後の極体放出失敗の頻度が有意に高いことが判明し、このことは生殖補助医療の安全性を高め、妊娠率を向上させる為に非常に重要な発見であることが評価され受賞に至りました。本研究成果に基づき、実際の臨床における移植胚選別システムの確立を推進して行く予定です。

*本研究は大月純子准教授の兼業先である英ウィメンズクリニックの臨床データ解析(英ウィメンズクリニックIRB承認)により得られた成果になります。




 減数分裂時の染色体分離後、紡錘体中央にmidbodyが現れ(左上図参照)、極体放出はこのmidbodyの位置で完了しますが、極体放出が完了前にmidbodyが消失すると極体放出失敗(減数分裂失敗)が起こります(右下図参照)。右上図はマウス卵ですが、ヒト卵でもmidbodyに細胞分裂を司る重要なタンパク(Plk1など)が局在しています(左上図参照)。有糸分裂でも同様に、細胞分裂完了前にmidbodyが消失すると細胞分裂失敗が起こります(左下図参照)。






受賞当日の大月純子准教授(写真左)

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