研究方針
     
           
   

私は物理屋ですので、常に物理的に興味のある新しいモノを探索するのが、自分の使命だと考えています。新しい物質には必ず新しい物理の誕生があり、このことは、これまでの物理学の発展の歴史において、証明されてきています。物理の探求には、その目的によって様々な対象がありますが、秋光研究室では現在、超伝導を中心に据えた2つのプロジェクトをメインに研究しています。

超伝導というのは、ある温度(臨界温度という)以下で電気抵抗が完全になくなる現象のことです。では超伝導によってその抵抗がなくなればどうなるのでしょうか?送電線などに利用すれば貴重な電力資源をムダなく遠隔地に送ることができます。日本では現在、実用化が図られているリニアモーターカーも超伝導を利用して高速運行の実験中です。つい先日も、有人最高速度581km/h(2003122)を達成しました。さらに長いスタンスで考えれば、現在は貯蔵不可能な電力の貯蔵や、あるいはコンピュータ素子への利用も可能になります。

このように超伝導には多くの応用分野が考えられますが、その臨界温度は1986年以降の銅を含む醸化物で高い臨界温度を示す物質の発見までは、大変低いものであり、その応用のためには低い温度まで冷却しなければならないというハンデがつきまとっていました。その後の銅を含む酸化物での高い臨界温度を示す多くの超伝導物質群の発見により、臨界温度は飛躍的に向上し、そのハンデが軽減され、実用化に向けて注目を集める技術に育ちつつあります。私の夢は、この臨界温度を室温まで上げることであり、今後は銅を含まない化合物でも物質探索を続けていきたいと考えています。超伝導の応用を見据えると、やはり銅酸化物のようなセラミックの場合に、利用するための加工等、乗り越えなければならない壁は多いため、より高いコストパフォーマンスを求めるためには、金属系の超伝導体が必要不可欠となってくるでしょう。現在発見されている金属系超伝導の臨界温度の最高は二ホウ化マグネシウムの39K0= 273K)で、まだまだ一般的には低温域であると言えます。今よりさらに高温の臨界温度を示す超伝導物質の探索…、これが第一のプロジェクトです。

第二のプロジェクトは、発見されたその物質がどうして超伝導になるのだろうかという、超伝導の機構を探るものです。新物質の発見と超伝導の発現は密接な関係にありますが、この中で最も難しいのは前者の新物質探索でしょう。とにかく様々な視点から実験を続けて探索する、とても辛い過程ですが、研究室の学生たちはよく考え、頑張ってくれています。

先が見えない、存在するかどうかわからない、だからおもしろいと…。そうして発見の喜びを手にしたら…また新しい物質と、新しい物理を求めて、探索をはじめるのです。

 

秋光 純