秋光純教授が第10回日本中性子科学会賞特別賞を受賞
     
           







   

 秋光純教授は、2012年12月10〜11日に京都大学吉田キャンパス百周年時計台記念館で開催された日本中性子科学会第12回年会において、第10回日本中性子科学会特別賞を受賞しました。以下に、日本中性子科学会が発行する波紋(Vol. 23 No. 1)において掲載された受賞理由を転載します。

 

受賞テーマ
超伝導物質探索,偏極中性子回折法を用いた磁性体の研究と中性子科学への貢献

 秋光氏は,全世界で話題になったMgB 2や他の多数の超伝導体の発見を筆頭に,電子軌道整列および自ら生成したchiral 構造の,偏極中性子による直接観測,さらには中性子回折法を用いた低次元系の研究等,多岐にわたる分野で非常に質の高い研究成果を挙げている.これらの業績,とりわけ高温超伝導体の発見およびその物理研究に対し,仁科記念賞,朝日賞はじめ,多くの栄えある賞が授与されている.
 同氏の業績・功績は,学開発展への寄与にとどまらず,教育・人材育成を通して大きな社会貢献につながっている.例えば,同氏が組織した数多くの研究プロジェクトは中性子科学ばかりでなく,今日の重要な実験手法を構成する他の量子ビーム利用の橋渡しの役割も果たし,多数の若手研究者の成長を促した.また,福山秀敏教授(現東京理科大副学長)との共同による凝縮系科学賞創設は,貴い若手育成精神の一つの象徴である.
 また,同氏は,多くの重要な会議の委員を務め,我が国の科学技術政策の方向性決定の側面からも中性子科学全体の活動を支えて来ている.例えば,19 期の学術会議会員,20 期以降の学術会議の連携会員として大型施設の全国共同利用のあり方等の提言に携わり,中性子科学会では大型施設共用問題特別委員会委員,高エネルギー加速器研究機構では,教育研究評議会評議員や問機構・物質構造研究所の運営委員のほか,多くの重要な委員を歴任した.これらの科学技術・学術界における活動を通して,科学研究コミュニティの意見形成に尽力した.
 このように,秋光氏は,中性子散乱分野での先駆的な研究成果に加え,物質開発においての大きな成果をもとに中性子散乱の有用性を具体的に示しながら,その発展に尽し,さらに,広く他の量子ビーム利用発展にも貢献してきた.中でも中性子科学会への功労は計り知れないものがある.これらの理由により,日本中性子科学会は同氏に対して,日本中性子科学会特別賞を授与することを決定した.