二万大塚古墳第1次発掘調査 概要報告
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  4 出土遺物

 1. 円筒埴輪

円筒埴輪は、計測できるもので基底部の径約24.0〜26.0cm、基底から最下段タガまでの高さ約12.5cmである。器壁は全体として厚めで、底部で4cmを測るものもある。タガは小形で、断面が三角形でタガの高さ1cm程度のものと低い台形で高さが5o程度のもの、低い丸形のものなど複数確認された。透かし孔は円形を呈している。調整は、外面にタテハケ、内面に主に指と工具によるナデが存在する。胎土は概観して数種類、少なくとも5種類程度に分類できる。焼成はあまいものから良好なものまで存在し、須恵質のものも確認できた。

また、朝顔形埴輪の肩部、頸部、口縁部の破片が出土している。口縁部の外面はタテハケ、内面にヨコハケが施されている。

以上の特徴から、円筒埴輪は川西編年のX期に相当するが、今回の調査では円筒埴輪の段数等の全体像は不明である。



 2. 形象埴輪

 今回の調査では、くびれ部西トレンチより多数の形象埴輪片が出土している。ここでは現段階で確認できる家形埴輪と人物埴輪について概要を紹介する。

 家形埴輪は造り出し上面の平坦部より一ヶ所に密集した状況で出土している。壁体部は3〜4cmの粘土帯を輪積みして成形し、その後隅部の丸味を補うため粘土帯を付加しナデにより接合している。壁面の内面はナデ、外面はやや粗いタテハケで調整されている。しかし窓の表現と考えられる透孔をもつ壁面では丁寧なナデによりハケメが消されている(埴輪実測図中図4)。透孔は底部から8.5cmの高さに位置し、幅12cmを測るが高さは不明確である。壁面によって透孔の有無、外面調整の違いがあることから前面と側面とを意識して作り分けた可能性がある。

 また屋根部は壁体部と別々に製作し、後で両者をナデにより接合させる方法を採っている。つまり屋根部の製作の面から見ると軒先も含めて一連の工程で屋根を製作し、成形済みの壁体部と接合している。屋根の形状については不明であるが、棟の上部に一定の間隔をおいて剥離面が見られるため鰹木が取り付けられていたと考えられる。

 人物埴輪については頭部が造り出し斜面より出土している。両眼、眉の部分が認められる(右写真)。頭頂部に剥離面が見られるものの冠などの有無は確認されていない。また左頭部に耳、あるいはみずらの一部と考えられる部分が残存している。


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