二万大塚古墳第1次発掘調査 概要報告
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  結  語


 今回の発掘調査により次のような点が明らかになった。

 (1) 南西に開口する横穴式石室を確認することができた。備中南部地域において、前方後円墳に伴う横穴式石室としては最古の例のひとつであり、石室の系譜を知る上でも興味深い資料となるはずである。

 (2) 北側のくびれ部で造り出しを確認することができた。前方後円墳に伴う造り出しとしては、この地域でほぼ最後の例であり、形象埴輪や須恵器の出土状況から祭祀の実態を復元する上で貴重な資料となる。造り出しは、南側にも存在する可能性がある。

 (3) 出土の須恵器から、6世紀中頃の築造が推定される。円筒埴輪の編年においても、ひとつの基準となる資料である。

 以上の点から、二万大塚古墳は、雄略朝期以降、備中南部地域で本格的な前方後円墳の築造が停止されていた約半世紀を経て、復活をとげた最初の前方後円墳と考えられる。造り出しの存在や、そこで執り行われた祭祀の様相は、前方後円墳の伝統をよく継承したものであることを示している。


 来年度以降の調査では、横穴式石室の完掘と、北の造り出しの全貌の解明、南の造り出しの確認、および墳丘の細部の形態や規模の確認を予定している。


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