二万大塚古墳　第三次発掘調査　概要報告

　　はじめに

　岡山大学文学部考古学研究室では、1998年から、およそ10年の予定で、５世紀後半から６世紀前半にかけてのいわゆる「雄略朝」期とそれ以後の吉備地域の動向を解明するプロジェクトを実施している。

　はじめの３年間で、二万大塚古墳の東北東に位置する岡山県吉備郡真備町天狗山古墳の発掘調査を実施し、2001年から３か年の予定で、真備町下二万の二万大塚（にまおおつか）古墳の発掘調査を行ってきた。

　二万大塚古墳は、６世紀中頃に築かれた、墳長約38ｍの前方後円墳である。昨年までに、墳丘では北側のくびれ部の造り出しなどを発掘し、円筒埴輪列や造り出し上の祭祀の跡を確認し、横穴式石室では床面に近いところまで掘り下げ、多くの土器や馬鈴をはじめとする遺物を発掘した。

　今年度は、墳丘では、北側くびれ部の周辺と、前方部の北隅の発掘を行い、石室は床面の完掘をめざしたが、一部を残す結果となった。石室からは、多量の玉類や鉄刀、鉄地金銅張り雲珠などの馬具をはじめとして、豊かな副葬品が出土している。

　今年度の調査で、備中南部の横穴式石室をもつ前方後円墳としては最古の例である二万大塚古墳の全貌がかなり明らかになり、今後は、石室や出土品の詳細な比較検討を通じて、この地域の首長系譜の特徴や歴史的位置づけについての研究を深めていく予定である。

　なお、プロジェクトの一環として、昨年に引き続き、東北東約200ｍに位置する勝負砂（しょうぶざこ）古墳のトレンチ調査を実施した。

　二万大塚古墳の発掘調査は、新納泉が中心となり、松木武彦が共同担当者となっている。また、勝負砂古墳の発掘調査は、松木が中心となり、新納が共同担当者となっている。ほかに、宇垣匡雅・野崎貴博・光本順が、調査の助言を行い、研究に加わっている。調査に際しては、土地所有者代表の守屋忠和氏や下二万地区の方々、および真備町教育委員会社会教育課の藤原憲芳さんにたいへんお世話になった。また、岡山大学文学部考古学研究室および埋蔵文化財調査研究センターの同僚諸氏からもさまざまなご援助を受けている。調査にご協力いただいた多くのみなさま方に厚くお礼申し上げるしだいである。

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