勝負砂古墳八次調査までのあゆみ
 第1次調査
 
 平板・レベルを用いて等高線測量図を完成させました!
 これによって本格調査にうつるための基本的なデータが揃いました。




 古墳の調査の基本的な手順として、等高線測量図によって、微妙な地形の変化に注目し、トレンチを設定します。等高線測量図の精度はその後の調査を左右する重要なものなのです。また、調査の基準となる墳丘主軸も等高線測量図に基づいて設定されます。
 第2次調査
 
 主軸沿いに小さなトレンチを開けることによって前方部の有無を明らかにしようと試みました。また、
周溝や堤の有無を明らかにしようと北側トレンチをあけています。 
 この時の成果は前方部の存在については明らかにはなりませんでした。また、東側では周溝状の遺構が確認されたものの、墳丘との関係が明らかでなく、時期決定の根拠となるような出土状況を示す遺物もなかったことからその後の調査に多くの課題が残されました。




 削平されるなどしている古墳の墳形、墳丘規模の確認調査は古墳の調査では埋葬施設の調査とおなじくらいに重要で頭を使う調査です。特に前方部がどこにつくのかわからないような古墳では、等高線測量図を「読む」ことによって最も効果的に成果が挙げられる場所を選ぶ段階で調査の成果は半分決まっていると言ってもよいでしょう。
 第3次調査

 
 前回周溝確認をおこなった第3トレンチの墳丘をはさんで南側で周溝確認のための調査をおこなっています。このときの調査でも、周溝状の遺構を確認していますが、これはのちの調査によって池の一部であることがわかっています。

 本当の溝状のトレンチではわかる情報は全体像の一部にすぎないということですね。なお、この時の調査ではトレンチ内から概ねTK47型式期相当の短脚高杯(須恵器)が出土しています。昨年度のTK23から47型式期相当の高杯形器台口縁部片と合わせて時期に関しての重要な資料かもしれません。
 また、この調査に先駆けて、墳丘西側や墳頂部でレーダー探査をおこなっています。いずれも特に反応なしという結果でした。

KEII-3RD.JPG - 40,985BYTES
後に池の一部とわかる溝状遺構
 

 第4次調査
 
 本調査三度目。いよいよ墳頂部に調査区がもうけられました。地表下ごく浅いところで検出した掘りこみは乱掘坑であることが明らかになりました。確認のために
タチワリを入れたところ地表下約3.4mでレキと粘土から構成された遺構の存在が明らかになりました。
 墳形確認の調査ではA・Bトレンチのふたつをあけることによって最終的な確認を試みました。Aトレンチでは比較的最近の池の存在が明らかとなり、またBトレンチでは溝状の遺構が確認され、埴輪は多数出土したものの、周溝の存在を決定付けることはできませんでした。


墳頂平坦面で確認された乱掘坑

 第5次調査
 
 第4次調査の成果をもとに、埋葬施設に関する情報・墳形に関する情報を得るための調査が始まりました。

 墳頂部トレンチでは埋葬施設に関する情報は十分に得られなかったものの、墳丘の築造方法についての多くの情報をえることができました。昨年度一部分を確認していたドーム状の盛土は上面が平坦で中心はほぼ墳丘の中心と一致すること、ドーム状盛土までの段階と、それよりあとの段階の大きく二つに分かれることなどです。
 墳形に関しては、Bトレンチの墳丘側にトレンチをあけ(Cトレンチ)墳丘との関係の把握を試みました。また、第3トレンチの西側に再度周溝確認のためのトレンチ(後円部北トレンチ)を設けています。Cトレンチでは盛土の可能性のある土層を確認していますが、後世の改変が著しく、周溝と墳丘との関係の把握はできませんでした。また後円部北トレンチでは第3トレンチと同様の周溝状の遺構を確認しました。

 
 第6次調査

 
 墳形や周溝等に関する最終的な調査です。今回は3つのトレンチを設けることによって多角的に墳形・墳丘・周溝に関する情報を得ようとのぞみました。前方部Dトレンチでは地山削り出しの前方部を確認し、後円部と前方部の接続部分の構築方法について明らかにしました。くびれ北トレンチでは1・4トレンチと一連の可能性の高い周溝状遺構を確認しています。後円部北トレンチでも同様に周溝状遺構を確認しています。

 これらの成果を総合的に考えると、勝負砂古墳は低平な前方部をもち、少なくとも墳丘北側には周溝をもつ全長42メートルの帆立貝形の前方後円墳であることがあきらかになりました。


勝負砂古墳の北側側面(右のビニールハウスの裏側が前方部)




 第6次調査のトレンチ設定は、3つのトレンチが相互を補完・補強しあい、墳形についての答えを出すという非常に重要な調査でした。それぞれのトレンチ設定も制約はあったものの効果的になされたものでした。今後はこの調査成果をわかりやすくみなさんに伝えられるように整理していくことが課題です。

 第7次調査

 第5次調査で検出されたドーム状盛土の掘り下げを行い、石室の被覆粘土を検出しました。その後、未盗掘の竪穴式石室を発見しました。竪穴式石室は内法で長さ約3.6m、幅約1.2m、高さ約0.7mで8枚の蓋石を持っており、東から2枚目の蓋石が割れて落下しているほかは完全な姿を保っていました。石室の中からは鏡や短甲、馬具などの豊富な副葬品が発見されました。副葬品は蓋石を除去したに記録して取り上げ、現在詳細な分析を行っています。しかし、石室の構造については解明されていない点あり、第8次調査に課題が残されました

                        
                            石室内からの副葬品出土状況
                              









                                     戻る