Our Research

–非生理的な環境下におけるタンパク質やバイオ分子応用のための基礎理論・技術の構築を目指して–

 

タンパク質や酵素は細胞の中で作られ,その細胞内や比較的限定された環境で機能するように設計されています。そのため,それらのタンパク質・酵素を物質生産や医薬品等に応用しようとすると,必然的にタンパク質・酵素は「本来,想定されていない環境」に曝されることになります。このとき,タンパク質・酵素はそれらの構造および機能を失ってしまう場合があります。例えば,元々,(細胞)液中で機能するタンパク質を乾燥すれば,構造が変化しますし,固定化酵素などのように固体表面に酵素を“ひっつける”と活性が消失したりします。固体表面で機能を失ったタンパク質・酵素はもはや汚れとなってしまいます。

 では,そのような非生理的な環境下においてもタンパク質・酵素を機能させるにはどうすればいいか?鍵は相互作用にあります。すなわち,生理的な環境下と非生理的な環境下では,タンパク質・酵素分子を取り巻く相互作用が異なるのです。乾燥すれば,タンパク質表面で構造形成に寄与していた水和分子が奪われますし,固体表面との相互作用はゲノムのどの位置にもプログラムされていません。私たちは,それらタンパク質・酵素を取り巻く相互作用の機構の解明とコントロールを軸として,以下のような研究プロジェクトを展開しています。

乾燥・保存時の酵素・タンパク質の変性・失活の高度抑制

糖がランダムな配向状態で凝集した非晶質固体(アモルファスマトリクス)中にタンパク質を包埋すると,糖の水酸基が水和分子の代わりにタンパク質の構造維持を担い,乾燥状態でタンパク質の構造変化・失活が抑制されます。私たちは,より高度なタンパク質・酵素の安定化を目指して,糖のアモルファスマトリクスの機能を最大限引き出せる操作条件および糖に勝る安定化物質について検討を行っています。

バイオ分子と固体材料をつなぐ 〜バイオセンシングのデザイン〜

生物の細胞内では,タンパク質,ペプチドや核酸などのバイオ(生体)分子がそれぞれ多様な相互作用を通じて機能し,生命活動が厳密に制御さ れています。私たちは,固体表面においてバイオ分子間の相互作用を高度に検出(センシング)し,生命現象の解明,医薬品のスクリーニング,生体材料やバイオセンサーの開発など基礎から応用まで幅広い領域で役に立つ知見を得たいと考えています。そこで,各種固体表面親和性ペプチドを「つなぐ」タグとして利用し,バイオ分子の機能を維持した状態で配向制御して固体材料表面に付着させる機能的バイオ分子固定化法の開発,および相互作用検出形態のデザイン化を進めています。

 

 

岡山大学 大学院自然科学研究科 応用化学専攻

工学部化学・生命系

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