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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.71 発行

 本学は10月18日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.71を発行しました。
 2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
 本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)細胞生理学分野の神谷厚範教授らの、がんに自律神経が影響することを発見した研究成果について紹介しています。
 自律神経は、脳から心臓や腎臓などの末梢臓器へ命令(電気信号)を伝える有線ケーブルで、ほとんど全ての臓器の働きを調節しています。疫学研究では、慢性ストレスががんの進展を加速させることが報告されており、ストレスに関連する自律神経の変化ががんに影響し得ることが示唆されていました。しかしながら、がん組織に実際に自律神経が入り込むのかどうかあまりよく分かっておらず、さらには、がん組織だけに分布する身体局所の自律神経の機能を調べるための研究技術も未開発であったため、がんの病状に、がん組織内に存在する自律神経がどのように影響するのかは分かっていませんでした。
 今回、神谷教授らは自律神経が乳がんの増大に伴って乳がん組織内に入り込み、がんの増殖や転移に強い影響を及ぼすことを発見しました。また、ヒト乳がん組織解析により、交感神経密度の高い患者群は、交感神経密度の低い患者群に比べて予後不良であることを発見しました。さらには、ウィルスベクターを局所注射することによって、がん組織に分布する自律神経の遺伝子を操作し、その機能をコントロールする「局所神経エンジニアリング」を開発しました。この技術を用いてマウス乳がん組織に分布する交感神経を刺激すると、原発がん のサイズは時間とともに増大し、遠隔転移が増えました。逆に、がん組織に分布する交感神経を除去すると、原発がんの増大と遠隔転移は抑制されました。将来、がん患者の方に、新しい治療法の選択肢を提供できるよう発展することが期待されます。
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も強みある医療系や異分野融合から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術、健康維持増進へより早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.71:The nervous system can contribute to breast cancer progression

<Back Issues:Vol.63~Vol.70>
Vol.63:Promising biomarker for vascular disease relapse revealed (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)渡辺晴樹助教、佐田憲映准教授)
Vol.64:Inflammation in the brain enhances the side-effects of hypnotic medication (岡山大学病院薬剤部 北村佳久准教授)
Vol.65:Game changer: How do bacteria play Tag? (大学院環境生命科学研究科(農学系)田村隆教授)
Vol.66:Is too much protein a bad thing? (異分野融合先端研究コア 守屋央朗准教授)
Vol.67:Technology to rapidly detect cancer markers for cancer diagnosis (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 紀和利彦准教授)
Vol.68:Improving the diagnosis of pancreatic cancer (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)岡田裕之教授、松本和幸助教)
Vol.69:Early Gastric Cancer Endoscopic Diagnosis System Using Artificial Intelligence (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)河原祥朗教授)
Vol.70:Prosthetics for Retinal Stimulation (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 松尾俊彦准教授&大学院自然科学研究科(工学系)内田哲也准教授)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
総務・企画部 広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp


本号で紹介した研究成果を担当した神谷厚範教授


ヒト乳がん組織内の交感神経密度と、無再発生存率の関係


国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。
また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています