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化学物質管理

化学物質の管理・取扱上の一般的な注意

「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(通称:PRTR 法),「毒物及び劇物取締法」(通称:毒劇法),「労働安全衛生法」(通称:安衛法)により定められた安全データシート(Safety Data Sheet ; SDS)制度により危険性や有害性をもつ化学物質を出荷する際にはSDSを交付することにより,化学物質の成分や性質,事故時の対応も含めた取り扱い方法,化学物質が受ける法規制などに関する情報を相手方に対して提供することが義務付けられています。また,試薬メーカーは,法規制の対象となっていない化学物質についても独自に SDS を交付しています。化学物質の使用者は,自分の取り扱う化学物質の性状などについて十分調査することが必要ですが, SDS により得られる付加的情報を最大限に活用して,事故の未然防止や事故時の対応についても理解した上で作業に取り掛からなければなりません。 SDS の検索は,日本試薬協会ホームページ等を参考にしてください。

【購入時の注意】
  • 初めて購入する化学物質については,危険性や有害性などについて必ず調査する。
  • 「毒物及び劇物取締法」で毒物,劇物に指定されている化学物質について,購入時に所定の受払簿に記録する。
  • 消防法で危険物に指定されている化学物質は,研究室や実験室に保管できる数量が規制されているので,必要以上に購入しない。
  • 危険性や有害性のない化学物質であっても必要以上の量は購入しない。
【使用時の注意】
  • 使用する前に化学物質の性質や生成物の性質,また,それらの物質の取り扱い上の注意事項や法的な遵守義務等を SDS 等により精査し,必要な安全対策を講じた上で作業を行う。
    有機溶剤などは,局所排気装置(ドラフトチャンバー)内での取り扱いが義務付けられている。
    特定化学物質については,必ず排ガス処理装置付きの局所排気装置内で作業を行う。
  • 化学物質の使用量が目的から見て最小の規模になるように実験等の作業計画を立てる。
    不必要に大きなスケールの実験は万一の事故を大きくする。
  • 有害な化学物質については,身体に直接触れることのないように注意する。特に溶液の飛散やガラス破片の飛来から目を守るため,保護眼鏡を着用する。
  • 保護眼鏡の他に保護手袋,保護マスク,保護面,安全ついたてなど,実験用保護具を常備する。また,消火器,救急手当用具などの位置を確認しておく。
  • 使用中の薬品以外の不必要な薬品を実験台の上に置かない。使用後は,所定の保管場所へ片付け,実験台の上に放置しないようにする。
  • 突発的な事故の危険があるので,一人で作業を行ってはならない。特に夜間や休日には,事故の際に助けが得られないことが多い。
  • 万が一の事故に備え,使用中の化学物質の SDS は,すぐに取り出せるようにしておき,病院等で治療を受ける際に SDS を持参できるようにしておく。
【保管時の注意】
  • 試薬は,試薬名をはっきり表示した安全な容器に保存する。試薬名が消える恐れのある場合には,早めにラベルを貼り替える。
  • 常用する化学物質でも,実験室には必要最小量を保管する。消防法指定の化学物質は,危険物貯蔵所として指定された場所以外に貯蔵する場合には,貯蔵数量の合計が指定数量(例えばエーテル 50L,アルコール 200L)の 1/5 未満に留めなければならない。これを越えて貯蔵する場合(上限は1倍)には,少量危険物貯蔵取扱所として,消防署への届け出が必要となる。
  • 薬品棚や保管庫には,性質の異なった試薬が混在しないようにする。例えば,無機物は陰イオン別,有機物は官能基別などに整理する。混合による事故を防ぐには,試薬を危険性によって分類する。
  • 地震の際に戸棚の試薬瓶が衝突,転倒,転落して割れることのないように,適当な仕切りや横木をつけるなどの工夫をする。この時,混合による被害の拡大防止にも留意し,試薬瓶の適切な配置に努める。
  • 毒劇物は,一般の試薬と区分し,施錠ができる堅固な金属製等の専用保管庫に保管しなければならない。また,受払簿により取扱量を毎回記録しなければならない。
  • 熱的に不安定な試薬の保管には冷蔵庫が用いられるが,漏れた溶剤蒸気が着火源になるので注意を要する。防爆式の冷蔵庫を使用するのが望ましい。
【管理上の注意】
  • 局所排気装置の管理
    「有機溶剤中毒予防規則」(通称:有機則)及び「特定化学物質等障害予防規則」(通称:特化則)では,有機溶剤については,ドラフトチャンバー内で,また,特定化学物質については,排ガス処理装置付きのドラフトチャンバー内で取り扱うように定められている。
    ドラフトチャンバーは,年一回自主点検を行い,点検の記録を3年間保存しなければならない。
  • 取り扱い時の注意事項等の掲示
    屋内作業場等(実験室)の見やすい場所に次の事項を掲示しなければならない。
    <有機溶剤>
    1.有機溶剤の人体に及ぼす作用
    2.有機溶剤等の取り扱い上の注意事項
    3.有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置
    <特定化学物質(特別管理物質)>
    1.特別管理物質の名称
    2.特別管理物質の人体に及ぼす作用
    3.特別管理物質の取り扱い上の注意事項
    4.使用すべき保護具
  • 作業環境測定の実施
    有機溶剤や特定化学物質の作業環境中濃度を6ヶ月に一回測定し,記録を3年間保存する。
  • 特殊健康診断の実施
    定められた検査項目について6ヶ月に一回健康診断を実施し,結果を5年間(特別管理物質については30年間)保存する。
  • 作業主任者の選任
    大学においては有機溶剤,特定化学物質を取り扱う講座単位で,有機溶剤作業主任者,特定化学物質等作業主任者を選任することが望ましい。
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