生活習慣病と血管障害


多嚢胞卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) の主症状は排卵障害であり,@希発月経,ALH基礎値高値,B超音波検査で多嚢胞像の3条件で診断されるが,子宮内膜異常や心血管イベントとの関連も知られている.PCOS 25症例,正常婦人 45症例を同意のもと対象とした私達の研究では,PCOS症例は,正常婦人に比較しBMIは有意に高値であったが,血圧には差が見られなかった.男性ホルモン(Testosterone),インスリン抵抗性の指標(Insulin,HOMA-R)は有意に高値であり,善玉コレステロール(HDL-Cholesterol)は有意に低値であった.子宮動脈の血管抵抗(Pulsatility Index:PI)値は,正常婦人に比較して,PCOS症例では有意に高値であった.また,卵胞期の子宮動脈PI値と,BMI,LH/FSH比との間に有意な正の相関が,HDL-Cholesterol値との間に有意な負の相関が見られた.PCOS症例の子宮動脈血流は不良であり,排卵障害以外にも妊孕性に影響している可能性がある.また,若年でも血管内皮障害が始まっている可能性がある.

 Chekir C, Nakatsuka M, Kamada Y, Noguchi S, Sasaki A, Hiramatsu Y.  Impaired uterine perfusion associated with metabolic disorders in women with polycystic ovary syndrome.  Acta Obstet Gynecol Scand. 2005 Feb;84(2):189-95.


血圧脈波検査が動脈硬化の診断に使用され,軽度の血管内皮障害から動脈硬化までの進展状況を評価可能となっている.