Genetics Group, Graduate School of Natural Science and Technology, Okayama Univ.
Since 00/05/22 Last update:11/1/22


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プロフィール
研究の方針


プロフィール

沓掛研究室のプロフィール
1990年7月 広島大学生物生産学部にて発足
2000年4月 岡山大学理学部に移転
2017年3月 沓掛教授の早期退職により閉室

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研究の方針

私たちは,細胞を「構造」と「情報」のネットワーク・システムであると考えています。 このネットワーク・システムを解明し,細胞の分子的全体像を構築することが,私たちの研究の最終的な目標です。

生物機能の大部分は蛋白質の機能発現に起因しており,蛋白質機能は遺伝情報にその源をおいています。したがって,生命現象を理解するためには,遺伝子と蛋白質の機能発現の制御機構を分子レベルで解明することが重要となります。分子生物学的な解析では,個々の現象に関わる分子の構造解析に始まり,素過程の試験管内再構成系の確立に至るまでの一連の研究を通して,分子間相互作用による機能制御機構を解明することが第一の目標となります。しかし,生物学的に重要でかつ本当に面白いのは,複雑に相互作用し合う細胞調節系のネットワーク内における個々の分子現象の生理的意義を解明することです。それには,突然変異体を用いた遺伝学的解析法が行える材料を用いることが重要です。一方,分解したシステムを再構築してネットワークの全体像を把握するためには,構造と情報ができるだけシンプルな生物を用いることが大切です。

これらのすべての条件を満たすものとして,私たちは大腸菌やサルモネラなどの原核細胞を選びました。これらの生物は1細胞=1個体ですから,

刺激受容 → 情報伝達 → 情報処理 → 応答制御

という一連の過程を1細胞の反応として解析できます。したがって,刺激→応答という最も基本的な生命現象を1個体内の分子間相互作用として記述できるはずです。また,これらは個体の遺伝的改変が容易な生物ですから,遺伝子レベルの研究を個体レベルの研究に発展させることが可能で,個々の分子現象の生理的意義をさぐるのに好都合です。

現在解析を行っているネットワークは,これらの細菌の運動器官であるべん毛の形態形成の制御システムです。べん毛は多数の蛋白質が分子集合してできた複雑な構造体で,その形成と機能には50個以上の遺伝子の作用が必要です。機能的なべん毛が形成されるためには,これらの遺伝子が順序正しく発現され,それらの産物が順序正しく輸送され,順序正しく重合されなければなりません。このように全ての過程が“順序正しく” 行われるには,常に構造形成の過程をモニターしてその情報を伝達し,次の過程を制御するシステムが必要になります。従って,この制御システムは構造と情報のネットワーク・システムを研究するための非常に優れたモデル系となります。私たちはこのシステムの解析を通して,いくつかの新しい制御機構を発見してきました。

現在解析を行っているもう1つのネットワークは,トキシン・アンチトキシン(TA)とよばれる遺伝子ユニットに関わるものです。TAシステムは,自分自身の増殖を阻害する毒素(トキシン)遺伝子とそれに対する解毒剤(アンチトキシン)遺伝子のセットからなります。自由生活を送る細菌の染色体には多数のTAシステムが存在しており,プログラム細胞死やストレス応答に関与していると考えられていますが,まだ不明な点が多く残されています。私たちは最近,サルモネラにおいて新しいタイプのTAシステムを発見しました。その生理機能や発現調節の研究を通して,細胞増殖の制御ネットワークの解明に迫ろうと考えています。

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