公益財団法人岩手生物工学研究センターが簡便・迅速なウイルスRNAの検出技術の実用化に成功

本分野の補完研究機関である公益財団法人岩手生物工学研究センター(研究計画名「高効率なウイルス・ウイロイドRNA検出技術の開発」)では、網羅的RNAウイルス検出技術「DECS法(DsRNA isolation Exhaustive amplification, Cloning and Sequencing)」(※)の洗練・普及を行い、植物ウイルス病害の感染拡大を未然に防ぎ、農林水産物・食品の安定供給の実現を目指しています。今般、植物由来のDRBタンパク質(Double-stranded-RNA-Binding protein)の2本鎖RNA結合活性領域の利用により、簡便・迅速なウイルスRNAの検出技術が開発・実用化されました。既知のウイルスの検出だけでなく、検出が困難であった新規のウイルス検出に大きく貢献することが期待されます。

(※)DRBタンパク質を用いて植物ウイルス由来の2本鎖RNAを特異的に検出し、未知のウイルスも含めた感染の有無の判別や、その塩基配列情報を調べることにより、感染ウイルス種を同定する技術(図)。

図1 DRBタンパク質を用いたウイルス2本鎖RNAの検出方法 
○特徴 ・最短2時間でウイルス2本鎖RNAの検出が可能
・100mg(生重量)の試料からウイルス2本鎖RNAの検出が可能

ウイルスは微小であり、電子顕微鏡を用いなければ見ることができない病原体のため、観察による診断は大変困難です。植物に感染するウイルスの大部分は遺伝子暗号をRNAとして持つRNAウイルスであり、これらは植物体中で2本鎖状のRNAを作ります。このウイルス感染時に作られる2本鎖RNAを検出することで、ウイルス感染の有無を判別できます。従来2本鎖RNAを感染組織から抽出するためには煩雑な操作が必要でした。岩手生物工学研究センターでは、植物の持つ2本鎖RNA結合タンパク質を活用して簡便・迅速に2本鎖RNAを抽出する手法を開発し(参考文献)、「革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム (拠点機関:国立大学法人岡山大学)」のもと、株式会社医学生物学研究所と共同で試薬キット化しました。

詳細は下記の公益財団法人岩手生物工学研究センターのHPをご覧ください。
http://ppathol.ibrc.or.jp/home/diagnosis

参考文献 Atsumi, G., Sekine, K.-T. and Kobayashi, K. (2015)
New method to isolate total dsRNA.
Methods in Molecular Biology 1236:27-37

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公益財団法人岩手生物工学研究センター
園芸資源研究部 主任研究員 関根健太郎
(電話番号)0197-68-2911(代表)


公益財団法人岩手生物工学研究センター
園芸資源研究部 植物病態分子研究チーム
(上段左 関根健太郎 主任研究員)




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