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人材育成事業 バイオIT公開講座 開催報告 |
【開催趣旨】 文部科学省が平成18年度から開始した「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」事業に おいて、岡山大学が提案した「ナノバイオ標的医療の融合的創出拠点の形成」が採択されました。 遺伝子治療・細胞治療といった先端バイオ医療の実績をもとに、ナノテクノロジーとバイオテクノロ ジーの融合によるヒトに優しい標的医療を実現するため、「ナノバイオ標的医療イノベーション センター」の拠点化を目指しています。本事業では、協働企業と積極的に連携することで、次代の バイオメディカルのイノベーションを実現したしますが、その鍵となるのは人材であり、人材育成 事業にも注力してまいります。 バイオ・医療の分野では、分析機器をはじめとする実験測定技術の向上が、大量の研究情報を もたらしています。この大量の情報を素早くかつ正確に解析するためにはIT(インフォメーション テクノロジー)の技術や知識は欠かせず、実験系と車の両輪ともいえます。過去連綿と続いてきた 実験系の人材養成教育は実績がありますが、このバイオ情報とITの融合領域であるバイオITは まだまだ新しい領域です。今後は、このバイオIT分野の人材育成が大きな課題となってきます。 今回、このバイオITをバイオ人材育成のカリキュラムとして取り上げ、基礎から最前線のトピックス まで、実習を交えてお話いただきます。 【 日時 】 2007年3月17日(土) 14:00~18:00 2007年3月18日(日) 10:00~15:00 【 場所 】 岡山大学 医学部附属図書館3階 (岡山大学鹿田キャンパス) 【参加費】 無料 【 定員 】 30名(実績延61名) |
プログラム | |
3月17日(土) 14:00~16:00 「遺伝子の多様性と公共データベース」 ~遺伝子解析情報の活用に向けて~ |
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東海大学医学部基盤診療学系 助教授 小見山 智義 先生 ヒト、チンパンジー、マウス、ニワトリ、イヌといった生物の完全解読が国際的に終了し、 このゲノム解読後のゲノム情報を利用した研究開発は今や重要な研究のポジションを 占めつつある。すなわちポストゲノムの時代のまっただ中にあるといえる。このポスト ゲノム時代において、研究開発には大きく2つの方向性があるように思われる。一つ は、上記生物をはじめとする多種多様な生物のもつ形質(表現型)や機能を遺伝子 解析情報(遺伝子発現、プロテオーム、生体ネットワーク)から理解しようという「生物の 多様性と進化」を探る研究である。もう一つは、がん、糖尿病、高血圧、ウイルス同定 などの臨床研究を応用した「疾患感受性遺伝子の探索」である。二つの方向性はとも に、大量で複雑な生命情報を扱うという意味では、情報生物学的な解析手法やデータ ベース等の構築技術が必須になることは間違いない。しかし、より社会と直結した後者 の方向性は、実利的なインセンティブや生命倫理の遵守という両方の要素をしっかり 織り込みながら今後さらに発展していくものと考えられる。ここでは、今後ゲノム情報を 用いて幾つかの可能性を紹介するとともに公共データベースの簡単な利用法について 説明したい。 |
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1991年3月東京農業大学農学部農学科卒業、1993年4月~1998年3月グンゼ株式会社緑花事業部、 1998年4月~2006年3月 湧永製薬株式会社(研究員)及び国立遺伝学研究所(嘱託研究員)、 2002年4月~現在 東京農業大学短期大学部醸造学科非常勤講師、 2002年11月~現在 (株)国際バイオインフォマティクス研究所取締役常務、 2006年4月~現在 東海大学医学部医学科基盤診療学系助教授 理学博士 |
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3月17日(土) 16:00~18:00 「健康医療におけるバイオメディカルインフォマティクス」 |
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東京医科歯科大学 水島 洋 先生 さまざまな生物種におけるゲノム(遺伝子)の解読も終了し、トランスクリプトーム (mRNA)や、プロテオーム(タンパク質)、メタボローム(代謝)、さらにはフェノーム (表現形質)やエピジェノーム(DNAのメチル化など)など、他のOMIX情報の網羅 的解析も「ハイスループット」に進みつつある。その中で、各種疾患と関連のある SNPや、疾患で変動のある発現が見られる遺伝子やたんぱく質などの同定も進ん でいる。薬効作用のある人を規定するSNPや、副作用の出やすい人に多いSNPの 探索などによって、個人の遺伝子や疾患の特性に合わせた医療を行うための個人 化医療の端緒となる薬が発売され始めている。同様に、環境因子と遺伝因子に 関連した疫学調査結果を用いることによって、遺伝型に依存した生活習慣指導も 可能であると考えられる。このような研究においてもバイオインフォマティクスは 重要である。今回の講演ではがんのシステム病態学的解析や、遺伝因子と環境 因子の相互作用による疾患リスクの研究成果などを紹介し、ポストゲノム時代の 個人化医療を進めるためのインフラに関しての展望を示し、薬の開発における臨床 研究のあり方から、ゲノム健康栄養指導の可能性、特定健診による個人健康データ の解析など、健康管理の将来像について議論したい。 |
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東京都出身 昭和58(1993)年3月東京大学薬学部卒業、昭和63(1998)年3月東京大学大学院 薬学系研究科修了、薬学博士。昭和63(1988)年4月国立がんセンター研究所入所、平成5(1994)年 10月より同所がん情報研究部 がん診療支援情報研究室長。平成18(2006)年11月より東京医科 歯科大学助教授。その他、日本バイオ農業情報化コンソーシアム(JBIC)データベース標準化 委員会委員等を務める。専門領域は、分子生物学、医療情報学、オミックス情報学、医療ネットワーク。 |
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3月18日(日) 10:00~12:00 「創薬インフォマティクスの概説と実施例紹介」 |
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産業技術総合研究所生命情報科学研究センター 広川 貴次 先生 ゲノムワイドで遺伝情報を取り扱うことができるようになった今、標的タンパク質 同定と創薬への展開は重要な課題の一つとなっており、その問題の解決にはプロ テインインフォマティクスとケモインフォマティクスが融合した創薬インフォマティクスの 活用が重要な鍵となっている。本発表の前半では、プロテインおよびケモインフォマ ティクスの視点から、標的タンパク質同定法、タンパク質立体構造予測、タンパク質 立体構造情報に基づくドラッグデザインおよびインシリコスクリーニングについて最新 動向を含め概説する。後半では、実験結果と計算機シミュレーションの融合研究 事例や、代表的な創薬標的タンパク質であるキナーゼやGタンパク質共役型受容体 について、特に結晶構造が存在しない場合や、構造変化を考慮した分子モデリング 技術に焦点を当てて紹介する。また、最後に産総研生命情報科学研究センターに おける創薬インフォマティクス技術者養成への取り組みについても触れたい。 |
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1971年生まれ。沖縄県出身。東京農工大学および同大学院工学研究科修了(工学博士)。 1998年に(株)菱化システム入社。科学技術計算部において分子設計ソフトウェア関連業務に 従事。同社退職後、2001年より産業技術総合研究所生命情報科学研究センターゲノム情報 科学チーム、研究員。2003年4月より分子設計チーム、チーム長。また2003年4月より東京 医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部連携助教授、2006年4月より東京大学大学院 新領域創成科学研究科客員助教授を併任。 |
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3月18日(日) 13:00~15:00 「マイクロアレイ解析とシステム生物学的アプローチ」 |
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東京医科歯科大学 難治疾患研究所 ゲノム応用医学研究部門 生命情報学分野 助手 萩島創一 先生 マイクロアレイ技術が成熟し、網羅的な発現解析が盛んに行われるようになり、疾病 の分子レベルでみたサブタイプ分類とそれに基づく治療・投薬・予後予測や薬剤ター ゲット遺伝子の同定が試みられるなど、医療・創薬への応用へとさらなる広がりを みせている。一方で、マイクロアレイ解析は、発現変動遺伝子の同定やクラスタ分析、 機械学習による発現データからの疾病分類などの現象論的理解にとどまり、機序に 基づく原理的理解には至っていない。このことから、米National Cancer Instituteが これまでに行われてきたマイクロアレイを用いたがん研究の欠陥を指摘している ように、主観によりバイアスされた解析になりがちである。すなわち、網羅性を生か した、事前知識に拠らない客観的なマイクロアレイ解析がなされているとはいえない。 本講演では、現在のマイクロアレイ解析の問題点をレビューし、これらの問題点を 克服するために必要なシステム生物学的なアプローチについて薬剤ターゲット 遺伝子の同定方法を例に展望する。 |
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1999年東京大学工学部計数工学科卒業。2005年東京医科歯科大学大学院医歯薬学総合 研究科生命情報学博士課程修了。博士(医学)。同大学情報医科学センター特任助手(科技振)を 経て、2007年1月から同大学難治疾患研究所ゲノム応用医学研究部門生命情報学分野助手。 専門はシステム生物学、とくに発生システム。システムの動態解析として遺伝子発現データから 転写上流配列の解析、細胞内システムのモデリングを行い、一方でシステムの進化解析も 進めている。著書に「バイオ研究が10倍はかどるMac OS X活用マニュアル」(共著、羊土社)。 |