メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) (methicillin-resistant Staphylococcus aureus)


 MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)とは、メチシリンで代表されるペニシリン・セフェム系な
どのβ―ラクタム薬のほとんどに耐性を示す黄色ブドウ球菌です。β―ラクタム薬の作用機序は、細菌の細胞壁合成酵素であるPBP- 2'(PBP-2プライム) と高い感受性を示すことで、細菌の細胞壁合成が不完全になり、細菌自体の内圧に耐えられなくなって、細菌は溶解します。しかし、MRSAは他の菌種から、β―ラクタム薬に結合しにくいPBP- 2' を作る遺伝子を挿入した毛色の変わった黄色ブドウ球菌なのです。PBP- 2' をコードする遺伝子は、MRSAの染色体上に存在するmecA遺伝子です。現在、分子生物学的手法を用いてMRSAの持つmecA遺伝子およびS. aureus保有のspa遺伝子を検査すれば、MRSAの同定が可能となっています。
しかし、
1) PCR法に共通の問題であるコンタミネーションによる擬陽性
2) 数は少ないようであるが、mecA遺伝子陰性でメチシリン耐性の菌株が存在する可能性があるため、擬陰性を生じる可能性があること
3) 検体中のPCR反応阻害物質の存在により擬陰性を示す場合があることがあげられ、このような欠点を充分に念頭において検査を行なえば、有用な診断手段となりうると思われます。

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