抗Jo-1抗体, anti-Jo1 antibody 


臨床的意義
 
抗Jo-1抗体は、西海とReichlinにより仔ウシ胸腺抽出物を抗原とした二重免疫拡散法で、多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)に特異的な自己抗体として見いだされた。この成績は諸施設でも確認され、PM/DMの重要な疾患標識抗体(マーカー抗体)であることが確立している。近年、間質性肺炎、多発関節炎を伴うPM/DMとの密接な関連が明らかとなり、診断、臨床経過・予後の推定など、臨床的有用性が高まっている。抗Jo-1抗体が、tRNAHisを特異的に沈降すること、tRNAHisに結合する50kDa蛋白二量体に抗原性があること、同抗体がtRNAのヒスチジル化を抑制することより、その対応抗原がヒスチジンをtRNAに結合させる反応を触媒するヒスチジルtRNA合成酵素であることが明らかとなった。その後、抗Jo-1抗体に比し低頻度であるが、他の5種類のアミノアシルtRNA合成酵素(PL-7:スレオニル-、PL-12:アラニル-、EJ:グリシル-、OJ:イソロイシル-、KS:アスパラギニルtRNA合成酵素)に対する自己抗体がPM/DM患者血清を中心に見いだされている。同抗体の産生機序として、ある種のRNAウイルス(ピコルナウイルス)ゲノムが自己抗原であるヒスチジルtRNA合成酵素と結合、免疫学的寛容の破綻をきたし、自己抗体の発現を招くという仮説が提唱されている。しかし、直接的検証、ならびに筋炎発症機序の解明は今後の課題である。近年、ヒスチジルtRNA合成酵素(Jo-1)とEBウイルス、インフルエンザウイルスなどのウイルス蛋白とのアミノ酸配列の相同性が報告され、moleculer mimicryによるウイルス感染・自己抗体産生も推定されている。PM/DMは、臨床症状(筋力低下、筋痛、特徴的皮膚症状)および検査成績(血清筋原性酵素値、筋電図、筋生検所見)より総合的に診断されるが、抗Jo-1抗体陽性も筋炎特異自己抗体として、PM/DM改訂診断基準の一項目となっている。同抗体は筋ジストロフィー、重症筋無力症などの他の筋疾患では検出されず、鑑別に有用である。

適応疾患: 
多発性筋炎・皮膚筋炎

測定方法: FEIA法

測定機器: ImmunoCAP 250(平成21年12月22日より)
            
 EVOLIS(日本バイオラッド(株)(平成21年12月21日まで)
       
BEPIII(平成17年12月28日まで)

測定試薬: ユニキャップエリア(ファディア株式会社)(平成21年12月22日より)
       
MBL(平成13年4月2日より改良試薬に変更〜平成21年12月21日まで)

機種変更相関、一致率

従来法との一致率(平成21年12月22日



y=0.908x + 0.421 r=0.999 n=15、100%(平成17年12月28日)

従来試薬と改良試薬の一致率

  抗Jo-1抗体 従来試薬
+ +- -
改良試薬 + 5 2 3
+- 0 1 2
- 0 0 10

n=23    一致率  65.2%

基準値:  :陰性、710 :判定保留、10  :陽性(平成21年12月22日より)
             
9.0 index 未満(陰性)  18.0 index 以上(陽性)(平成21年12月21日まで)
             
5.0 index 未満(陰性)  10.0 index 以上(陽性)(平成13年3月31日まで)

採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管

関連項目

CPK 
抗核抗体(ANA)
 

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