クロストリジウムディフィシルトキシンA, CDトキシンA
平成13年10月15日(月)より開始

臨床的意義
 クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は、芽胞を形成するグラム陰性の偏性嫌気性桿菌である。C.difficileは、化学療法剤や抗生物質などの投与中に、偽膜性大腸菌や下痢を引き起こす院内感染原因菌として有名である。原因となる抗菌薬の種類は多岐にわたっている。本菌は、空気にきわめて弱い偏性嫌気性菌であり、検体の採取、分離、培養には相当の注意が必要であった。本検査はこれに対処するため、菌体の抗原成分を直接糞便中より検出するもので、比較的短時間に結果を得ることができる。C. difficileは新生児の糞便中で約半数程度に認められ、また生後1カ月以内の乳児の30%程度に検出されるが、本菌による消化器症状をみることはきわめて稀である。健康な成人の糞便中にも、通常はごく少量のC. difficileが認められる。一般に糞便中で最優位菌として存在することはないため、抗菌薬の投与により腸内細菌叢が変化し、菌交代によって増殖を始め、一定量に達するとトキシンA、トキシンBと呼ばれる毒素を産生する。トキシンAは、粘液分泌作用、粘膜障害、腸炎を引き起こし、トキシンBの細胞毒性はトキシンAより約1000倍強いが、腸管毒性はない。よって、トキシンAはC.difficileの病原性における最も重要な役割を担っていると考えられている。トキシンA、トキシンBは同時に産生され、主な症状はトキシンAによるが、トキシンBの共同作用によって症状に関与してくると考えられている。欧米では、偽膜性大腸炎のほとんどがC. difficileの感染によるものとの報告がある。偽膜性大腸炎の確定診断は内視鏡検査により行なわれ、結腸部分にほぼ円形に隆起した白色ないし黄白色の偽膜が認められる。C. difficileは、多くの抗生剤や化学療法剤に耐性である。 除菌にはMRSAと同様にバンコマイシンが比較的有効とされる。

測定方法: イムノクロマトグラフ法

測定試薬: ユニクイック(関東化学)

基準範囲: (-)

適応疾患: 
偽膜性大腸炎

所要時間 : 30分

採取容器:採便管 

結果の解釈における注意点:
・トキシンAとBは、同時に産生されるとされているが、トキシンBのみを産生する株も検出されている。その場合、本検査は陰性となるが、その株が偽膜性腸炎を起こすか、また症状の程度がどうかについては、不明である。


関連項目

一般細菌同定・培養


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