ワイルフェリックス反応, Weil−Felix reaction
平成14年3月31日まで院内検査
平成14年4月1日より外注(BML)
平成18年6月27日より外注(MBC)
平成19年3月31日中止


臨床的意義

 Weil-Felix(WF)反応は、1916年にドイツの医師Weilとプラハの細菌学者Felixが発疹チフス(epidemic typhus)患者の血清と同一疾患患者から分離した変形菌プロテウス(Proteus vulgaris)OX19株の間に凝集が生じたことを報告したことに始まった。その後、紅斑熱(spotted fever)患者血清と別の分離株(P.vulgaris OX2)の間にも凝集の起こることが明らかとなった。また、ツツガ虫病(tsutsugamushi disease、scrub tyghus)の診断にP.mirabilis OXK株が用いられるようになったのは、1930年ごろにKingsburyがマレー半島で試みたのが始まりである。このようにWF反応は、特異的血清反応がまだできていなかった時代から広くリケッチア感染症の診断法として用いられてきた血清反応であり、感染リケッチアの種類により、これら3株のいずれかと凝集する現象を利用して血清診断に用いられてきたものである。発疹チフス群患者血清はOX19株と強く反応し、OX2株との反応性は弱い。紅斑熱群患者血清はOX2株との強い反応性を示し、OX19株とは弱い。両群患者血清はOXK株とはまったく反応しない。1982年に日本で見つかった日本紅斑熱(Japanese spotted fever)リケッチアは紅斑熱群に入る。またツツガ虫病患者血清はOXK株とのみ反応し、他の株との交差反応性はない。その他のリケッチア症であるQ熱、塹壕熱、エーリッキア症などはどの株とも反応しない。この反応は、リケッチアと無関係のプロテウス菌の特定株が、リケッチア症患者血清と凝集するという現象を利用した診断法であるが、1990年以降リケッチアのリポ多糖(lipopolysaccharide ; LPS)と、プロテウス菌のLPSに存在するO-抗原に共通構造のあることが明らかになった。最近になり、プロテウス菌3株のLPS構造が報告され、特異な構造が存在することが示された。さらに、その成分がWF反応で対応するリケッチアのLPSにも存在しており、化学構造および血清学の両面からWF反応のメカニズムが明らかとなった。ただし、ツツガ虫病リケッチアのみがO-抗原をもたず、その共通構造となるべく成分はいまだ不明である。WF反応は発疹チフス群リケッチア症、紅斑熱群リケッチア症そしてツツガ虫病の診断法として利用可能である。しかしながら、この診断法は、リケッチアとは無関係のプロテウス菌を抗原とした非特異的血清反応であるために、確定診断としてではなく、未知リケッチア症の診断、あるいは既知リケッチア症のスクリーニングとして利用することが適当である。特に、日本紅斑熱の場合は、このWF反応によって初めて発見できたという経緯がある。ただし、すべてのリケッチア症診断には応用できず、あくまで上記のリケッチア症にのみ用いられ、例えばQ熱やエーリッキア症あるいは塹壕熱患者血清などは陰性である。

測定方法: 細菌凝集反応

基準範囲
平成14年4月1日より

OXK 40倍以下
OX2 40倍以下
OX19 40倍以下

平成14年3月31日まで

OX19 160倍未満
OXK 40倍未満

適応疾患
I群(発疹チフス群)…発疹チフス,発疹熱 ・ II群(紅斑熱群)…ロッキー山紅斑熱・III群(つつが虫群)…つつが虫病 ・IV群(その他の群) …Q熱,塹壕熱,腺熱 

採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管   

関連項目

ツツガムシ抗体検査(カトー)(ギリアム)(カープ)

先頭に戻る    前ページに戻る