エストリオール, E3 (estriol) 
(試薬製造上の不具合により平成16年7月4日までで中止


測定法:RIA2抗体法

外注会社:OML

臨床的意義
 妊娠経過とともに妊婦血中・尿中エストロゲンは著増し、妊娠末期には血中で非妊時の100倍、尿中では500〜1,000倍となり、その尿中エストロゲンの90%はE3である。さらに妊婦血中のE1、E2、E3は妊娠経過に伴い、遊離型および抱合型の占める割合は各エストロゲンによって異なった動態を示す。妊娠末期ではE1で約80%、E2で約60%、E3で約90%が抱合型で存在している。また、妊娠経過に伴う血中遊離型(F)エストロゲンおよび抱合型(C)エストロゲンの比(C/F)は各エストロゲンにより異なり、E1では妊娠中期までは一定した上昇傾向を示さず、妊娠末期に上昇する。E2ではほぼ全期を通じて一定しているが、妊娠末期に軽度上昇を示す。E3では妊娠経過に伴い前期で4.5、中期で6.5、末期では8.5と著しく上昇し、Cの増量が著しい。エストロゲンの種類によって抱合代謝過程が異なり、また妊娠週数が進むに従い遊離型および抱合型の割合が変化することの機序はいまだ明らかではないが、おそらくは胎児・胎盤の成長に伴うエストロゲン生成能の変化、胎児・胎盤系におけるステロイドによるステロイド調節機構などの因子が関与しているものと考えられる。これら妊娠中のエストロゲンの主な産生源は胎盤であるが、胎盤自体のみでその生成全経路を行っているのではなく、胎児または母体から供給されるアンドロゲンを材料としている点がその特徴である。性ステロイド生合成経路に関与する種々の酵素のうち、胎盤にはaromatase、sulfatase、3β-HSD、17β-HSDは存在するが、16α-hydroxylaseは存在しない。しかし、妊婦尿中のエストロゲンのほとんどを占めるE3は16α位に水産基をもつエストロゲンであるため、胎盤でE3が生成されるには16α-hydroxylated androgenが供給されなければならない。一方、胎児肝には16α-hydroxylase活性が強く、胎児副腎で分泌された多量のdehydroepiandrosterone-sulfate(DHA-S)は胎児肝で速やかに16α-OH-DHA-Sに転換され、この胎児性16α-OH-DHA-Sが胎盤に運ばれてE3が生成される。すなわち、胎盤あるいは胎児各臓器はステロイド生成において各々の特有の酵素を有し、胎児・胎盤の両者が一つのunitとして初めて完全なE3生合成が成立し得るのである。このようにE3は胎児・胎盤両者の機能を反映しており、ヒト胎盤性ラクトーゲン(human placentral lactogen ; hPL)が胎盤の発育と機能の指標であり、その分泌調節に胎児自身の関与が少ないことと対照的といえよう。母体尿中E3値は胎児・胎盤系機能の指標として現在、臨床上最もよく測定されている。尿中エストロゲンの大部分がE3であることから、尿中総エストロゲンを測定し、E3値とする簡便法がよく用いられている。

異常値を示す疾患
高値疾患: 双児、巨大児

低値疾患: 胎児死亡、胎児仮死、無脳児、先天性副腎発育不全症、胎児発育遅延、腎障害、肝障害、副腎皮質ホルモン大量投与、妊娠中毒症、胎盤酵素欠損症(特にサルファターゼ欠損症)

基準値

血清

男性 14pg/mL以下
女性 卵胞期 21pg/mL以下
排卵期 21pg/mL以下
黄体期 21pg/mL以下
閉経後  
妊婦 前期 850pg/mL以下
中期 570〜5200pg/mL
後期 3300〜24000pg/mL

尿

男性 1〜10μg/day
女性 卵胞期 2〜10μg/day
排卵期 6〜30μg/day
黄体期 5〜20μg/day

採取容器:血液茶)生化学一般用分離剤入り試験管      尿:OML(尿容器

関連項目

E1 
エストラジオール(E2) 
ヒト胎盤性ラクトーゲン

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