乳酸, lactic acid

臨床的意義
乳酸(αオキシプロピオン酸)は、αヒドロキシ酸の一つで、骨格筋、脳および赤血球でのグリコーゲン代謝に始まる解糖系代謝経路の最終産物として嫌気的にピルビン酸から産生される。 血液中の乳酸濃度は主に肝臓や腎臓、骨格筋における乳酸合成や代謝回転の結果を示している。正常な代謝回転が保たれている場合、乳酸総産生量の約30%は肝臓の糖新生系(Coriの回路)の基質として利用される。 血液中の乳酸は一価の陰イオンとして存在し、ピルビン酸との濃度比がほぼ10:1に保たれている。この比率に乱れを生じる原因には次の場合がある。 第1にNADH:NADは変化せずピルビン酸値が急増した場合と、第2にNADH:NADは増大したがピルビン酸値は変化しない場合、さらにこの2つの現象が合わさった場合がある。 乳酸の変化値から代謝動態を判定する場合には、ピルビン酸との相対的な比率(L/P比)を知ることが有用な情報となる。脳脊髄液中の乳酸濃度は正常では血中濃度に平衡する。 しかし、脳脊髄液中での生化学的な代謝状態に変化がある場合には解離する。このような場合としては、脳脊髄圧の急変、脳脊髄内出血、細菌性髄膜炎、てんかんなどがある。 ウイルス性髄膜炎では髄液中の乳酸値は一般に上昇しないので、髄膜炎を鑑別するポイントの一つとされている。

測定方法:比色法

測定機器:日本電子BM6050(平成26年3月24日から)
     日本電子BM1650(平成18年7月18日より平成26年3月20日まで)
     日立7070自動分析装置(平成18年7月14日まで)

測定試薬:デタミナーLA(ミナリスメディカル株式会社)

基準範囲  全血  5.6〜21.6 mg/dL

相関
令和4年12月21日
X:旧採血管(ネオチューブPET プレイン(ニプロ株式会社))とY:新採血管(乳酸・ピルビン酸用スピッツ 1ML(日本硝子産業株式会社))の相関
y=1.003x-0.176  r=0.996  n=20
平成26年3月24日
X:BM1650、Y:BM6050
Y=1.01X-0.51  r=0.998  n=47
平成18年7月18日
X=旧機器、Y=新機器
Y=1.01X+0.05 r=0.999  n=61  

異常値を示す疾患
高値:ショック、心筋梗塞、左心不全、肺塞栓、慢性貧血、急性シアン中毒、ビタミンB1(チアミン)欠損症、急性アルコール中毒、エピネフリン、グルカゴン、von Gierke病、フルクトース1,6-ビスホスファターゼ欠損症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、ピルビン酸脱炭酸酵素欠損症
低値:糖原病II、V、VII型、LDH欠損症、筋ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症

採取容器: 専用/LA・PA

関連項目

ピルビン酸(PA)

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