<国際フォーラムの趣旨に関するご説明>
岡山県総務学事課にメールでお送りしたもの
まず、岡山県関係者を除く参加者が全員確定し、それを受けてイベントのタイトルも「日本政治学会・岡山県共同国際フォーラム:3.11後の政治学と日本の政治」に決まりました。もし岡山県との共催が実現しない場合には、もちろん「岡山県」と「共同」の文字は外させていただきます。共催を受けていただける場合には、ラウンドテーブルへの県からの出席者についてご相談させていただくとともに、閉会の辞も県の方でお願いできればと思っております。
次に、フォーラムの趣旨や性格について改めてご説明したいと思います。このようなフォーラムの開催を理事長と私が考えたそもそもの出発点は、未曾有の大災害を前にして、学問としての政治学、および政治学の現実政治への関わり方について深く自省するとともに、国家レベル・地方レベルを問わず、大災害における政治そのもののあり方についても、チェルノブイリなどの経験も踏まえながら、何をどのように考えるべきか、未来を見据えて議論を深めるべきだ、という思いでした。そこでは、伝統的なアカデミズムや政府機構の制度的枠組みに安住することは許されません。また、議論がアカデミズムや政府関係者のサークル内部で閉じてしまうのではなく、広く市民とともに考え、NPOやボランティアの「公共力」からも真剣に学んでいくことが必要であると考えました。大震災後真っ先に現地に入って種々の活動を行い、優れた成果を上げてきたAMDAの菅波代表に特別講演をお願いしたのも、こうした理由によるものです。フォーラムの聴衆を学会会員に限定せず、岡山県民を始め広く市民一般としたのもこのような考え方に基づいています。
このような発想から生まれたフォーラムを具体化していくとき、私たちが考えたもう一つのポイントは、「グローカル」というコンセプトでした。釈迦に説法だとは存じますが、単純化すれば、これは「ローカルに発想し、グローバルに行動する、同時にグローバルに発想し、ローカルな生にこだわる」といった考え方です。今回、このフォーラムに「国際」の名を冠したのも、講師を海外からお招きするからというだけではなく、このように視野を地球全体に広げるべきだという考えによります。大震災や原発事故がグローバルな影響と反応(好意的なものも身構えるものもすべて含めて)を引き起こしていることはいうまでもありません。
他方で、私たちはグローカルにおける「ローカル」、すなわち地域の視点も同じく重要であるという立場に立っています。まず、このフォーラムの開催には、今年度の学会が予定されていた東京地方の大学が被災した上、電力事情などによって困難な状況に置かれたため、岡山大学法学部が急遽その任務を肩代わりすることになったという事情があります。つまり、それは岡山から行われる震災支援活動の一つであり、だからこそ、私たちは本来なら1年以上の準備期間を要する学会開催を万難を排してこの時期にお引き受けしました。そして、そのような岡山発の支援活動をさらに発展させるものとして、日常の研究教育活動と学会開催に向けた短期集中作業という二重の負荷に加えて、あえて今回のような大きなフォーラムを立ち上げることにした次第です。
したがって、そこではグローバルあるいは国際という視点のみならず、岡山という地域の視点も前面に打ち出しています。菅波代表による特別講演が本来の意味でのグローカルな意義を持つものであることはいうまでもありません。そして、このようなフォーラムをこの地で開催するということ自体が、岡山から全国、さらには世界に向けた強力な発信になるとの自負を、私たちは持っています。そこに、岡山県からの大震災支援活動や災害対策における県の役割などについてのご発言をいただけるなら、その発信には自治体の現場が持つ重みと具体性が加わります。
岡山という地域の重視についてはほかにもいくつかの点を挙げることができますが、長くなりますので、ここでは人選についてのみ記させていただきます。まず、講師には岡山とゆかりのある3人の方を選びました。その一人が菅波先生であることは言うまでもありませんが、薬師寺さんも津山市のご出身で、岡山県や岡山大学、津山市などに多くの貢献をしてこられました。また、キャンベル教授はもちろん岡山出身ではありませんが、かつて岡山市にセンターを置いていたミシガン大学で長く日本研究に携わってこられました。ご存じのようにミシガン大学はカリフォルニア大学バークレー校と並ぶ州立大学の一方の雄であり、ほとんどの学部が全米トップテンにランクされています。岡山市にあったミシガン大学日本研究所日本研究センターは、残念ながら10年を経ずして閉鎖されましたが、岡山市郊外で行われた学際的な地域研究の成果はのちに大著となってアメリカにおけるその後の日本研究に大きな影響を与えました。そして、今年は奇しくも同センター開設60周年にあたり、偶然幾重不明になっていたその研究資料群がイェール大学で発見されました。ミシガン大学はこれを機に岡山大学、そして岡山の地との協力関係再構築を検討していると伺っています。