全期間を通した事業計画内容

 研究交流の目標

 生物の多様性・遺伝資源が全地球規模で急速に失われているなか,中国雲南省及びその周辺地域を含む東アジアは未利用植物資源の宝庫として,世界各国から熱い注目を集めており,遺伝資源をめぐる国家戦略上極めて重要な地域です。中国科学院昆明植物研究所は豊富でユニークな資源を背景として基礎・応用研究を展開している世界的な研究機関であり,岡山大学は,日本の大学・研究機関として唯一の「大学間交流協定」を同研究所と締結し,10年以上にわたって研究教育交流を行ってきました。 
 本事業では,昆明植物研究所を基幹として研究交流を発展・加速化させ,照葉樹林帯に分布する多様な植物資源の調査・保存・評価・開発研究のための有用植物遺伝資源研究拠点を諸外国に先駆けて構築し,安全・安心な食料生産のための研究拠点へと発展させたいと思います。
 具体的な研究交流目標は下記の通りです。

  • 共同研究: 中国雲南省及びその周辺地域において,ムギ類,イネ,ダイズ,ウリ科作物,タロイモ及び野生植物のフィールド調査を共同で行い,昆明植物研究所に新設された最新鋭のジーンバンクの整備に貢献するとともに,貴重な遺伝資源(種子など)を日本に導入します。また,日本側研究グループが保有する分子遺伝学,分子生物学などの先端的技術を駆使して,遺伝資源の評価・開発研究及び基礎研究を展開します。
  • 研究交流: 拠点機関での全体会議や国際シンポジウム,セミナーなどを定期的に開催し,共同研究や研究者交流などについて議論するとともに,研究交流を促進して,拠点としての実質化をめざします。
  • 若手研究者の育成: 若手研究者の相互交流(長・短期)を促進するとともに,現地調査,国際シンポジウム,セミナーなどに若手研究者を積極的に参加させ,次世代を担う人材の育成に努めます。その結果,本拠点の継続的発展が保証されます。

 研究交流計画の概要

  ①共同研究・研究者交流:

 ヒマラヤ山麓に広がる中国雲南省及びその周辺地域は重要作物のイネ,ムギ類,ダイズ,ウリ科作物や薬効成分を含む野生植物の遺伝的多様性の宝庫です。そこで,これらの植物資源に関するフィールド調査を共同で行い,種子サンプル,パスポートデータやさく葉標本を昆明植物研究所に新設されたジーンバンクに登録し,同バンクの整備に貢献します。
 さらに,日本側研究グループが保有する先端的分析技術を駆使して,遺伝資源の評価・開発研究及び基礎研究を展開します。 特に注目しているのは,各種作物の多様性と進化・種分化の解明,病害抵抗性や環境ストレス耐性に関する基礎・応用研究です。 また,昆明植物研究所の植物化学グループと岡山大学の有機化学グループの共同研究により,制ガン作用を持つ薬効成分の解析を行います。


  ②セミナー等の開催:

 このような研究教育拠点を構築するには濃密な研究者交流・人脈形成が不可欠であり,セミナーなどを定期的に開催して共同研究について議論するとともに,研究者交流を促進して,研究教育拠点としての実質化・継続的発展をめざします。このために毎年40名以上の研究者の派遣・受け入れを計画しています。特に,次世代を担う若手研究者(准教授,助教,ポスドク研究員,大学院生)の相互交流(長・短期)を促進して,幅広い知識や技術を身につけ,また国際感覚にあふれる人材の育成に努めます。 コアメンバー会議を拠点機関で頻繁に開催し,実効のある交流事業を円滑に展開できるようにします。さらに,研究グループ内での全体会議や外部の研究者も交えた国際シンポジウムなどを定期的に開催します。また,個別の細部課題について研究交流を深めるためには小規模での集まりも必要であり,セミナーなども頻繁に開催する予定です。

 

 実施体制概念図

概念図

 

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