二万大塚古墳第1次発掘調査 概要報告
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  2 墳 丘

1. くびれ部西トレンチ 

本古墳では、発掘以前から表面観察によりくびれ部の北側に張り出し状の高まりが認められ、造り出しの存在が予想されていた。そのため、造り出しの有無を確認し、存在する場合にはその形態や墳丘本体との関係並びに構築過程、そして付随する祭祀遺構・遺物や外表施設の実態を解明する必要があり、調査区を設定した。調査期間の3ヵ年の内に造り出しを全面発掘する予定である。今年度の調査では、まず造り出しの西側部分の、コーナーと前方部側縁との接続部分とを検出することを目的としてトレンチの範囲を決定している。

 調査の結果、墳丘面が壇状に張り出す様相を呈し、さらにその上面を中心として大量の須恵器片・埴輪片が出土した(左図)ことから、造り出しの存在を認定できる。調査区内の墳丘面は地山削り出しで築成されて盛土は施されず、葺石や埴輪列その他の外表施設も確認されていない。平面形態は墳丘側から見て外側の狭い台形状と思われるものの、コーナー部分に稜が付かないなど全面に風化が見られ、現状では確定できない。また、調査区南側の前方部斜面では造り出しの上面と同レベルで傾斜が緩やかになり、造り出しの上面と連続するかたちでテラスが存在する可能性がある。造り出し上面と裾部との比高差は1.8〜1.9m、テラスの可能性のある部位より外側の造り出しの全長は5.3m程度である。


 遺物は、種類が認定できるものに、埴輪では円筒埴輪、家形埴輪、人物埴輪が、須恵器では脚付き壺、装飾須恵器装飾部、甕、杯がある。このうち原位置である可能性の高いものはすべて造り出し上面から出土した。裾部から見て奥側(調査区南東部)に破片が密に分布した家形を主体とする形象埴輪(右写真)や、手前側出土の脚付き壺の脚部や甕の破片の一部(左写真)、造り出しの付け根付近縁辺の直立した埴輪片3個体である。ただしいずれも固定のための施設は確認されていない。調査区全体では、埴輪片は前方部斜面を含め全面より多数出土しているが、須恵器片は造り出しの上面・斜面・裾部に集中する。



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