二万大塚古墳 第2次調査 概要報告
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  2 墳 丘

 1. 北くびれ部トレンチ


 本年度の調査では、昨年度の調査で存在を確認した造り出しの形態・規模・築造方法ならび
に墳丘との接続関係、そして付随する祭祀遺構・遺物の状況を把握するために調査区を設定した。
また、くびれ部構造・外表施設・後円部端の確認も行った。なお、流土の状況を確認しながら調
査を行うために、
12ラインから西に1mの地点から2.5m幅のベルトを設定した。その後、造り出
し主軸を確定し、それに沿ってベルト東半分を掘り下げ、主軸セクションを観察した後に、造り
出しを全面発掘した。

 調査の結果、後円部から前方部にかけてテラスを確認した。昨年度の前方部西トレンチと本
年度の後円部東トレンチでは明瞭なテラスを確認できなかったが、本調査区では確認できたため、
墳丘が
2段築成であると判明した。テラスは後円部では盛土を施して築成されているのに対して、
前方部では地山削り出しによって築成されている。また、テラスでは
33基の円筒埴輪が列をなして
いる。これに加えて造り出しに向かう埴輪列を確認し、東辺では
9基、西辺では昨年度の2基に加え  ↑二万大塚古墳 全景(北から)
4基の円筒埴輪を検出した。本年度検出した列をなす埴輪は計46基を数える。これらのうち、造
り出しに向かう東辺の列の分岐点周辺のみで布掘りの掘り形を確認した。埴輪の残存状況は、盛土
を施した後円部側のテラスでは良くなかった。なお、調査区南西部の埴輪列において、埴輪が検出されなかった箇所があるが、掘り形が確認できなかったため、元来そこに埴輪が置かれていたか否かは不明である。

造り出しはくびれ部および前方部に接続し、地山削り出しによって築成されている。また、その上面は墳丘のテラスと緩い傾斜でつながり、埴輪列の形態から墳丘側で6.1m、裾側で4.7mの台形を呈すると考えられる。上面から裾部にかけては、徐々に外側に拡がっていくやや不整の形態を呈する。上面と裾部との比高差は約1.7mであり、造り出し全長は5.6m、最大幅は8.0m程度である。

出土遺物で種類の認定できるものには、埴輪では円筒埴輪、家形埴輪、人物埴輪が、須恵器では甕、杯、瓶類等がある。このうち原位置である可能性が高いものには、上述した埴輪列の他に家形埴輪が1基、人物埴輪もしくは動物形埴輪の基部と思われるものが3基、甕が昨年度の1個体に加えて2個体、杯身が1個体あり、これらは全て造り出し上面から出土した。なお、甕は地山を掘り窪めて底部を埋めていた。原位置ではないが、昨年度出土したものとは別個体と思われる人物埴輪の頭部と腕部も出土した。埴輪片は調査区全面で多数出土しているのに対して、須恵器片は造り出しの上面・斜面・裾部に集中する。また、手捏ね土器と鉄滓が後円部の2段目斜面で出土している。




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