二万大塚古墳 第三次発掘調査 概要報告

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 5. 馬 具

 今年度の調査で石室からは、昨年度調査に引き続き多数の馬具が出土している。今回出土したもので現在分かっているものとしては、剣菱形杏葉、青銅製馬鈴、磯金具、?、ホ具、飾金具、雲珠、辻金具、責金具、壺鐙金具、兵庫鎖がある。

 
今年度も昨年度と同様に馬鈴が出土し、その数は今年度7点に及びすべて玄室部からの出土で、昨年度の2点を含め計9点となっている。7点の内3点は残存状態が悪く詳細は不明である。残存状態の良好な4点は球形鈴3点と八角鈴1点である。球形のものは圏文系の文様をもつものが1点あり、その計測値は全長約4.8p、体部径約4.7p、鈕は欠けて約0.3p残っており、方形の鈕をもつと考えられる。他の2点は体部全体に珠文が施され、内1点が方形の鈕をもつ。八角鈴は昨年度出土したものと大きさもほぼ同じで、全長約11p、体部径約7.7p、鈕高約1.9pとなっている。その他、今年度新たに見られる馬具には磯金具、?、雲珠、辻金具がある。磯金具は破片が1Wから出土しており、鉄地金銅張りで周囲には縁金具が鋲によって取り付けられており、その内側には波状列点文が施されている。?は1E、2Wから2点ずつ出土しており、いずれも脚は残っておらず環状のものが1点と刺金を伴うものが3点見られ、1E出土の環状のものは、輪金部長約5.2p、環部幅推定4.9pとなっている。雲珠は鉢部頂に花形座を2段有し、その上に宝珠形の飾りが付く鉄地金銅張りのものが2Wで1点出土しているが、脚部の残存状況は悪く4脚しか見られない。元の脚数は推定で8脚であったと思われる。計測値は鉢部径約12.4pで脚部を含め約14.7p、花形座1段目は花弁が9枚で径4.9p、2段目は花弁が8枚で径3.1pとなっている。高さは約2.6pで、宝珠形飾りを含めると約4.7pになる。辻金具は鉄地金銅張りで1W、2Wから1点ずつ出土しており、1W出土のものは4脚で、鉢部の頂部に座金の痕跡が見受けられる。また責金具が1点残っており、2条の刻目を有する。辻金具の計測値は全長10.9p、鉢部径6.0p、高さ2.0pとなっている。2Wのものは、脚が3脚欠けており1脚のみ見られる。計測値は鉢部径約5.4pで脚を含め約8.1pとなり、高さは約1.9pとなっている。

 昨年度は引手壺、鏡板、剣菱形杏葉、馬鈴、鞍金具、ホ具、雲珠の一部、飾金具、鉤金具、壺鐙金具、兵庫鎖が出土している。今年度出土した剣菱形杏葉と昨年度出土した剣菱形杏葉とは異なる種類のものである。杏葉や鐙の種類と点数から、馬具は2セットあったと考えられる。



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