二万大塚古墳 第三次発掘調査 概要報告

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6. その他

 その他の遺物として、鎹、鉄釘、銅鏡が出土している。

 
鎹は石室1Eから1点出土している。残存状態が良好でほぼ原形をとどめる。全長は約21pで、両端側約5.9pを斜めに折り曲げて手部を作っている。また、手部は先端ほど細く、断面もやや丸みを帯びる。背部の長さは約9.1pで断面は約1.6×0.7pと長方形を呈している。手部外面中央付近には一部に横方向の木目痕が残っており、原位置こそ保ってはいないものの木に打ち込まれていたことが確認できる。

 
鉄釘は石室1Eから4点、1Wで7点、2Wで4点、3Wで1点の総計16点が今回出土している。そのうち完形のものは6点である。いずれも頭部一端を折り込む形態をしており、断面は方形をなすが、長方形のものから正方形に近いものまである。全長は最長18.3p、最短10.2pとばらつきがあり、全長と厚さなどから大きく4つに分類できる。まず全長が12.0p前後で細身のもの、全長が11.0p前後で太身のもの、全長が13.0p前後でがっしりしたものの3類であるが、これらは昨年度調査における鉄釘の分類にうまくあてはまる。また、2Wから18.0p前後の太くてがっしりとしたタイプのものが1点のみ出土している。前2者は1W、1Eそれぞれから、後2者は2Wから出土しているが、前回調査における鉄釘の出土状況を考慮すると、鉄釘、鎹ともに原位置を保っている可能性は低い。よって現段階では、それぞれの関係について断言することはできない。

 同じく石室から出土した鏡は直径11.5pで内区には簡略化された半肉彫りの同一文様の獣形が5個配されている五獣形鏡である。縁は厚さ約0.7pの平縁で、鏡面はゆるやかな凸面を描く。内区と外区の厚みは0.3〜0.4pである。鏡面、鏡背とも残存状態は良くないが、外区外側において幅0.5pの鋸歯文帯が確認できる。鈕は直径2.1pの円鈕で円環座をもつ。岡山の同時期古墳における鏡の出土例は少ないため、今回の例は珍しく興味深い資料といえる。



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