二万大塚古墳 第三次発掘調査 概要報告

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1. 石室構造

 本古墳の石室は、主軸がN27°Eの南南西に開口する横穴式石室である。両袖式で、玄室は平面長方形を呈する。石室は現状では全長9.07mを測り、そのうち玄室は長さ4.70m、幅が奥壁で2.44m、中央で2.38m、前壁で2.26mである(奥壁の数値は掘り下げを完了していないため、現状での値である)。また羨道は現状では長さ4.37m、幅が玄門で1.00m、開口部で0.80mである。天井石は石室内に落ち込んでいたものを含め、奥壁最上段の石を除くと8枚確認される。床面から天井石までの高さは、玄室中央で2.53m、羨道入口で1.13mを測る。本石室の壁面は持ち送り構造である。奥壁の石積みは、最上段にその大きさと高さから天井石として用いられたと考えられる石を使用しており、その下には縦に2列の石積みがなされている。現在のところ最上段の石を除くと4段の石積みが確認できる。側壁については、玄室では上部においては大小様々な石をやや粗雑に積むのに対し、下部においては横長で比較的大きな石を整然と積んでいる。西壁は土圧により一部がせり出している。6〜7段の石積みが確認でき、下から2段目と3段目の間に目地が通る。羨道部の西壁では4段の石積みが見られ、ほとんどが50〜70pの大きめの石材で構成されており、東壁に比べて比較的整然と積まれている。東壁は下部に60〜80pの大きめの石材を使用し、上部では比較的小さい石材を粗雑に積み、崩れかけている箇所が多くある。東壁、西壁ともに土圧によって一部がせり出している。羨道部における閉塞施設については確認されなかった。

 本年度の調査では、床面と思われる地山をほぼ全面で確認した。ただし羨道入口付近では、側壁の石積み1段目の高さをそろえ、床面を整形するために、地山の上に若干土を盛っているようである。また羨道部において、排水溝と思われる溝状の遺構を検出した。構築方法としては、羨道入口付近では、まず地山を溝状に掘りくぼめ、全体にうすく土を盛った後、溝を埋めている。堀り形については、明確にそれとわかる掘り込み等は確認されなかった。



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