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第3章 定西塚古墳


5.人骨・動物骨


 人骨・動物骨ともに多くの資料が出土した。
 人骨についてであるが、整理作業が進んでいないために人体数の確定には至っていない。昨年度調査同様、主に西塚石室からの出土であるが、今年度調査では東塚西Bトレンチでも同一人体骨分と考えられる人骨の出土があった。

 東塚西Bトレンチ出土人骨は、脛骨骨体の一部・大腿骨骨体の一部・左上顎骨と左口蓋骨の一部(正中口蓋縫合線は残存しない)などである。

 西塚石室出土人骨は、昨年度調査で確認した1B区人骨集中部の一連の資料であろうと考えられる、1B区出土の橈骨骨体の一部・大腿骨遠位端骨頭の一部などがある。さらに今年度調査で、3B区で新たな人骨集中が検出されており、鉄釘の出土状況と考え合わせて、ある程度埋葬原位置を止めていると考えられる。主な部位として頭頂骨・側頭骨・椎骨・肩胛骨・尺骨・寛骨・大腿骨・膝蓋骨・脛骨・腓骨・足根骨遠位列・中手骨・中足骨・指骨・切歯・前臼歯・後臼歯などであるが、肋骨・胸骨は出土していない。現整理段階では壮年〜老年の女性1体分の可能性があることが指摘できる。

 1B区・3B区人骨集中以外からも多くの出土がある。1A区出土人骨は、1号陶棺脚間の完存の第1頸椎をはじめ頭蓋骨・大腿骨・寛骨・距骨・前臼歯・後臼歯などである。2A区出土人骨は側頭骨・椎骨椎弓など、2B区出土人骨は肩胛骨・上腕骨・中手骨・距骨・舟状骨など、3A区出土人骨は指骨などである。また、5号陶棺内から出土した完存の前頭骨は4〜12歳ぐらいの少年男子のものであることがはっきりしており、昨年度5号陶棺出土の壮年男性のものと思われる胸骨柄・側頭骨との関係が興味深い。

 動物骨についてであるが、今年度調査では比較的層位の低い層の調査が主体であったため、昨年度調査よりも混入骨と考えられる資料の出土は少ない。主にCervus(鹿)・Castor(犬・狸?)などの出土がある。また、6号陶棺脚の部分出土のBos(牛)(もしくはCervus)の大腿骨遠位端骨頭をはじめ多数の動物骨が、動物埋納の状況を示す可能性があるため、今後慎重な整理を行う必要がある。

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岡山大学文学部考古学研究室copyright,1997

制作者:西田