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第3章 定西塚古墳


4.遺物


武器・馬具


武器

  武器は大刀と弓に関係する遺物が出土した。

 大刀関係の資料としては、鉄刀身、鞘尻、足金具、責金具、はばき、鐔、および鳩目金具と考えられる環状の金具が出土しており、全て鉄製である。うち鞘尻、足金具(実測図)及び責金具、はばき、鐔はほぼ鉄刀身に付属した状態で出土した。

 鉄刀身(右図)は完形であり、残存長86.4cm、最大幅3.2cmを測る。鋒は切刃状をなすわけではなく、強いフクラがつく。刀身は直刀で平造りであり、古墳時代に通有な特徴をもっている。鞘尻は残存値において最大幅3.0cm、最大長3.2cm、厚さ1.7cmを測り、昨年出土した青銅製のものと類似した形態だが、大きさは一回り小さめである。同様の資料は方頭大刀に伴うものであることが多く、本資料も昨年の資料と同様方頭大刀に伴う可能性が高いと考えられる。責金具は鋒側に1点と柄部に1点の計2点出土しているが、鋒側のものは銹化が著しい。柄側のものは残存値で長さ3.9cm、幅0.4cmを測る。内側に木質が確認されており柄木をはさみこんでいたと考えられる。足金具は2点出土しており、うち柄側に近いものは吊り手孔が佩裏方向に寄っており、残存値において最大長3.3cm、最大幅1.8cm、厚さ1.0cmを測り、鋒側に近いものは最大長3.6cm、最大幅1.7cm、厚さ1.0cmを測る。はばきはほぼ完形で断面倒卵形を呈する。鐔はいわゆる喰出鐔で倒卵形を呈し、やや銹化が進んでいるもののほぼ完形であり、残存値において最大長4.5cm、厚さ0.9cmを測る。柄頭は出土していないが、鳩目金具と考えられる金具が出土しており、最大径1.2cmである。鳩目金具は頭椎、圭頭、方頭大刀等に伴うことが知られており、今回の調査で出土した鉄刀身、および鞘尻等と一連のものである可能性もある。

 弓関係の遺物としては鉄鏃と両頭金具が出土した。

 鉄鏃(実測図)は小片を含めて総計125点が出土しており、そのうち鏃身部が判明するものとしては長頸式31点、有茎平根式5点がある。有茎平根式のものは全て方頭式である。長頸式31点は片刃箭式27点、鑿箭式4点に分類でき、片刃箭式はさらに鏃身関の有無でさらに分類可能である。出土状況に着目すると、西塚石室では3A区で鉄鏃がまとまって出土しており、昨年の出土状況からみて、複数の集中区が認められる。また、今回出土した鉄鏃中には漆が付着した痕跡のあるものが3点見られる。さらに、鏃身部あるいは頸部が曲げられたものも3点出土しているが、その性格については不明である。

 両頭金具は9点出土した。うち完形に近いものは1点で全長2.8cmである。鉄管の継ぎ目は明確ではない。昨年出土したものと同様に管の両端には13~14の花弁状突起が見られる。また古墳時代後・終末期に通有の特徴である4弁の花弁状突起を有するものも1点出土しており、西塚石室内では唯一の出土例である。


馬具

 西塚石室内より、鉄製の鉸具(実測図)が1点出土している。長さ5.5cm、幅3.2cm、輪金の径0.7cm、である。刺金の存否は定かではない。基部の一部が破損している他はほぼ完形であり、形態は馬蹄形を呈する。昨年出土のものに比べると、くびれ部が基部に近い。この鉸具は、昨年出土した一連の馬具の一部である可能性が強い。

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岡山大学文学部考古学研究室copyright,1997

制作者:西田