今回の発掘調査では、前回残していた0・2.5・5.0・主軸ベルト及び各陶棺内と3区全体を掘り下げて初葬時の床面を検出し、0・2.5・主軸ラインに幅10cmのサブトレンチを設定し岩盤まで掘り下げて発掘を終了した。
本調査で出土した遺物は武器、馬具、土器などで構成されており、その大部分が3区陶棺外から出土した。
武器は、大刀、鞘尻、はばき、鐔、鳩目金具が1点ずつ、両頭金具9点、鉄鏃は鏃身部の確認できないものを含めて125点が出土し、そのうち長頸式を31点、有茎平根式5点を確認している。
大刀は3A区主軸ベルトのほぼ中央から閉塞際にかけて鋒が北西を向く状態で出土した。なお、鞘尻、足金具、責金具、はばき、鐔は全て、大刀に付随した状態で見つかっている。また、鳩目金具は5号陶棺南西部の脚間から出土した。
両頭金具は3区からの出土が中心であった。そのうち、3点は3A区において径20cm程の範囲内で近接して出土した。
鉄鏃は、そのほとんどが3区より出土した。特に3A区より有茎平根式1点、長頸式3点が集中して出土し、その中には漆の付着も見受けられた。なお、数点の鉄鏃片が3・5・6号陶棺脚下より出土している。
馬具は2B区よりホ具が1点出土した。
土器は、須恵器杯蓋18点、杯身17点(うちいずれも9点は完形)、高杯5点、長頸壺4点、甕片、土師器杯身1点が出土した。長頸壺4点は3B区より出土し、そのうち3点は5号陶棺南側に並んで接した状態で出土し、いずれも床面にほぼ乗っている。なお、その長頸壺の並びの南に、高杯が1点近接して出土した。また3A区より、大刀の直下、レベル差2cmの位置で高杯が出土した。
本調査では、陶棺の搬出を行い、その際多数の土器が3・4・5・6号陶棺下より出土した。そのほとんどが須恵器であり、陶棺の脚下からも多数出土した。中でも、4号陶棺の北端に並ぶ全ての脚下より須恵器の甕片が、5号陶棺下からは完形の須恵器杯蓋1点、杯身1点、甕片3点が脚下より出土した。6号陶棺では脚下より完形の須恵器杯蓋1点、杯蓋片1点、他に須恵器片1点が出土した。
装身具は、1A区0ラインベルト中より銅地金張の耳環が1点、2.5ラインベルトより石製の玉が1点出土した。
不明製品は、2号陶棺下より鋲付金銅製品が、1B区より青銅製品が1点ずつ出土した。また、円盤形の骨製品が3B区側壁際の人骨に近接した位置より、ゆづかと思われるヘラ状の骨製品が3B区主軸ベルト際より1点ずつ、半月形の骨製品が3B区閉塞際と排土中より2点出土した。
鉄釘は破片を含めて63点が出土した。そのうち3点は、5号陶棺から東へ約10cmの南北直線上に先端を上にした形で約40cm間隔で出土した。また、鉄釘が集中する5号陶棺東側では木片を検出した。以上より、5号陶棺東側に木棺の存在を認識した。
刀子はすべて破片であるが1A区より2点、2B区より4点、3B区より1点、鎹は破片も含めて3A区より4点、3B区より2点、鉄滓は2A区より1点、3B区より5点出土した。
なお、人骨は2号陶棺の底部から残存状態が悪いものが出土し、5号陶棺内南端より頭蓋骨が、5号陶棺東側より木片とほぼ同レベルで頭蓋骨と下半身の骨がそれぞれ出土した。
動物骨は多数出土しているが、その中で牛の大腿骨遠位端骨頭が6号陶棺南西隅の脚の部分より出土した。
岡山大学文学部考古学研究室copyright,1997
制作者:佐々田