西塚では、石室から須恵器と土師器、弥生土器、中世土器などが出土している。須恵器では杯蓋、杯身、高杯、長頸壺、甕片が出土した。
須恵器杯蓋(実測図)は18点出土し、うち9点は完形である。つまみの形状、かえりの形状、径、厚さなどの諸特徴により6種類に分類可能である。1類は、宝珠形のつまみを有し、径10cm前後で、かえりの明瞭なもの。2類は、全体形は1類のものと同様でかえりが小さいもの。3類は、1類よりも扁平で大きなつまみを有し、径12cm前後で、かえりの明瞭なもの。4類は、3類よりも大きなつまみを有し、かえりが明瞭で、径が1類よりも若干大きく、全体的にかなり厚ぼったいつくりのもので、高杯、長頸壺などの蓋の可能性もあり杯蓋かどうかについては今後検討を要する。5類は、全体形は4類と同様であるが、つまみの頂部がくぼんでいるもの。6類は、直径5cm前後の輪状つまみを有し、径が最も大きく18cm前後で、口縁端部が庇状となりかえりが明瞭なものである。
須恵器杯身(実測図)は17点出土し、うち9点は完形である。口径、器高などの法量や調整などにより何種類かに分類可能である。特に立ち上がりをもつ杯身が1点出土しているのは注目すべきである。また高台付杯身(実測図)も、口径、器高、調整、高台の形状により何種類かに分類可能である。
須恵器高杯(実測図)は5点出土し、青灰色と灰白色を呈するものに分けられ、いずれも短脚で無窓の高杯である。灰白色を呈するもののうち、脚の底部が高台状に若干張り出したものが1点ある。
長頸壺は4点出土した。うち3点は5号陶棺南に並んで出土し、もう1点は少し離れた東壁付近で出土した。4点ともにほぼ完形で青灰色のものと灰白色のものが2点ずつある。4点それぞれで高台の張り出し方に差があり、時期の違いによる可能性も考えられる。
土師器杯身が1点出土しているが口径が小さく、かなり粗いつくりのもので、内面に暗文が見られない。昨年度までの東塚・西塚石室内の調査で出土しているいわゆる畿内産土師器とは性格を異にすると考えられる。
また西塚前庭部では、須恵器片と、昨年度出土のものと接合可能と思われる須恵器甕片が数個体分、畿内産土師器片が1点出土しており、前庭部祭祀との関連がうかがえる。墳丘では弥生土器片、中世土器片が出土している。
岡山大学文学部考古学研究室copyright,1997
制作者:西田