西塚前庭部では、昨年度は西塚主軸より西半部の状況を確認し、東半部においては開口部列石の状況や追葬時床面の確認を行った。
今年度は昨年度の調査をうけて列石の走行状況と性格を明らかにするために東半部に拡張区を設けた。東半部の既掘区も引き続き調査を行い、初葬時や追葬時の床面確認に努めた。
東半部では昨年度確認した追葬面の下位の層を確認しており、この上面に昨年度検出された西塚開口部列石から南へ伸びる前庭部B列石が築かれていた。また、新たに初葬時の床面をその下位に確認した。この面に西塚開口部列石が築かれている。このことから、西塚開口部列石を築いた後に時間差をおいて前庭部B列石を築き、そしてB列石を築いた面の上に薄く追葬時床面を敷いた、という過程が明らかになった。
その他、古墳築造に際しての前庭部の構築過程を明らかにするため、東西幅0.5mの先行トレンチ(写真)を設け調査を行ったところ、昨年度初葬面と考えられていた赤色変成岩で構成される層は東塚前庭部で見られたものと類似しており、岩盤を削って敷いた造成土であるという解釈を得た。そして、この造成土の下位には東塚前庭部で旧表土と確認された層と極めて類似した層序が続いている。
拡張区においては東端に、南北にのびるC列石を確認し、その下には西塚の盛土上面と考えられるテラス状の面を確認した。この面は東半部で確認している前庭部B列石の上を覆っていることから、B列石に伴うものと考えている。なおその面の北側に南北幅0.8mの範囲で先行トレンチ(写真)を設定し掘り下げたところ、開口部列石がさらに東へ伸びることがわかり、それと角をなす形で南側へ伸びてゆく石灰岩と礫岩を主体とする数段の列石を検出した。この列石は拡張区南側の初葬時床面上で別に検出した、赤色変成岩と石灰岩を主体とする3、4段積みの列石につながると考えられる(西塚前庭部A列石)。A〜C列石の相互の関係は以上のとおりだが、東塚・西塚いずれに伴う構築物かという問題を含め、これらがどのような性格を有するかは今後検討すべき課題である。
閉塞施設においては、陶棺搬出に際して記録の後に一部除去しているが、その他は図面記録を行い良好な出土状況そのままに保存している。
今年度出土の遺物としては、昨年度同様、鉄滓、須恵器甕片、須恵器片、土師器片、弥生土器片などがある。須恵器甕片、土師器片は昨年度出土のものの一部である可能性が高い。他、閉塞施設中から骨片が数点出土している。
岡山大学文学部考古学研究室copyright,1997
制作者:寺村