勝負砂古墳第4次調査・二万大塚古墳第4次発掘調査 概要報告

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1.埴輪

 今回の調査では約500点の埴輪片が出土しており、大部分は前方部Bトレンチからの出土である。いずれも小片で、全形を窺いうる資料はない。現在のところ、円筒埴輪と朝顔形円筒埴輪が確認でき、円筒埴輪片が大部分を占める。

 円筒埴輪の外面調整はヨコハケ、タテハケ、ナナメハケの3種類があり、ヨコハケを施したものには静止痕が認められるものもある。個体復元できるものがないため一個体における外面調整の施し方については不明であるが、突帯をはさんでタテハケとヨコハケの両方を持つ破片もある。内面調整はヨコハケ、タテハケ、ナナメハケ、指によるナデが確認できる。突帯の形状は台形や断面「M」字状を呈するものがあり、なかには押圧技法と思われるものも含まれる。透かし孔は円形である。基底部は基底部調整を行っているものもあり、復元径は約22.5cmをはかる。器壁の厚みは口縁部で0.81.2cm、基底部で1.92.2cm、その他の部位で0.81.5cmほどであり全体的に薄手である。焼成はあまいものから良好なものまであり、須恵質のものも含まれる。黒斑は確認できない。

 朝顔形円筒埴輪の頸部と思われる破片も出土しており、復元径は約13cm、約24cmである。

 これらの点から、今回出土の資料は外面調整ヨコハケを指標とする川西編年W期の特徴と、押圧技法・基底部調整を指標とする川西編年X期の特徴の両方を示している。よって、天狗山古墳・二万大塚古墳出土の埴輪よりも古いものである可能性もあるが、系統差を示しているとも考えられる。

【参考文献】 川西宏幸1978「円筒埴輪総論」『考古学雑誌』64-2



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