Research Activities of Laboratory

風や潮流による物体振動を利用した新しい発電法

風により吊橋などの構造物が振動し,ときには構造物を破壊するほどの大きな振動になることがあります.このような流体励起振動を利用して,風,海の潮流,川の水流などからエネルギーを取り出す新しい発電の開発に取り組んでいます.プロペラ式の発電に比べて,構造がシンプルで低コストの発電が実現できます.また,風切り音などの騒音を発生せず,鳥類や魚類等の生物を傷つけない自然に優しい発電方法です.

関連文献
「空力振動を利用した発電のための振動増幅法」
 比江島慎二,樋吉佑一;風力エネルギー,Vol.96, pp.135-141, 2010
「上流側円柱加振によるウェイクギャロッピングのフィードバック制御」
 比江島慎二,中野正史郎;第21回風工学シンポジウム論文集,pp. 363-368, 2010

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洋上発電のための低コスト風況観測手法

ヨーロッパを中心に洋上風力発電の導入が盛んです.その導入にあたっては,洋上の風況を事前に調査する必要があります.通常,陸上では観測塔を建てて風速計により観測しますが,洋上では観測塔などの建設に多大なコストがかかり,漁業区域では観測塔の設置さえ困難なケースがあります.われわれは観測塔と風速計の代わりに,ドップラーソーダをボートに搭載して洋上風況を観測する手法を研究しています.観測塔を設置する必要がないため,低コストで簡易な洋上風況観測が可能になります.ただし,波で動揺するボートの上でドップラーソーダを水平に保つ必要があり,そのための水平保持装置を開発しました.2軸の振り子からなるジンバル構造で,振り子の固有振動数を極限まで低下させることにより,波の動揺に対して免振効果を発揮します.

関連文献
「洋上風況観測のためのドップラーソーダ水平保持装置における動揺安定化」
 比江島慎二,小銭進司;日本風工学会論文集,Vol. 35, No. 2 (No. 123), pp.47-56, 2010
「ミニドップラーソーダを用いた相関法による風況予測」
 樋吉佑一,比江島慎二;第20回風工学シンポジウム論文集,pp. 145-150, 2008

DSC07666.JPGボートに搭載したドップラーソーダ洋上風況観測装置 (クリックすると動画が開きます)

コンピューターシミュレーションによる風車騒音伝搬の予測

風車のプロペラから発生する低周波音などが問題となっています.複雑な地形上を伝搬する音は地形条件によっては,より遠くまで届く可能性があります.また,風や気温差などの気象条件によっても,音の伝搬性状は大きく変化します.このような複雑地形上で気象条件の影響を受けながら複雑に伝搬する騒音を予測するには,コンピューターシミュレーションが適しています.風車周辺環境への音響伝搬性状を風車設置の事前に予測するための高精度シミュレーションツールを開発しています.

関連文献
「複雑地形や地形風の影響を考慮した屋外音響伝搬の数値解析」
 比江島慎二,向井靖彦,吉木健吾;土木学会論文集G,Vol.66, No.1, pp.35-45, 2010
「屋外音響伝搬解析における地表面境界処理に関する検討」
 比江島慎二,吉木健吾,向井靖彦;応用力学論文集,Vol.12, pp.205-213, 2009
「気象影響を高精度に考慮した屋外音響伝搬解析手法の構築」
 比江島慎二,向井靖彦,渡邊恭;土木学会論文集A,Vol.65 , No.3 , pp.708-717, 2009

5.2case2-1面動画.gif複雑地形上を伝搬する風車騒音のコンピュータシミュレーション (クリックすると動画が開きます)