岡山大学 法学部

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第7回岡山弁護士会・岡山大学法学部共催 ジュニア・ロースクール岡山 報告

第7回ジュニア・ロースクール岡山開催について(報告)

1 行事の概要

 2011年11月19日(土),岡山弁護士会・岡山大学法学部共催で,岡山大学にて「第7回ジュニア・ロースクール岡山」が実施されました。ジュニア・ロースクールは,中学生・高校生を対象として,法の原理原則,法的なものの考え方を身につけることを目的とした法教育実践の一環として毎年開催され,今回で第7回を迎えることができました。
 本年は,中学生8名,高校生11名が参加し,岡山県内のみならず,香川県,山口県からの参加もありました。また,倉敷市の中学校教員1名のほか,保護者の方2名にも授業に参加していただきました。
 岡山大学からは,法学部・法科大学院の学生がチューターとして参加しました。5,6名のグループごとにチューターが2,3名入り,適宜議論の進行を手助けしました。岡山大学教員も5名参加し、各グループの議論に適宜参加・助言しました。
 岡山弁護士会からは,佐藤弘一県民ネットワーク委員長,第1限担当の横田亮弁護士,第2限担当の原智紀弁護士のほか,2名の若手弁護士に参加していただき、各グループの議論に適宜参加・助言していただきました。

2 第1限 「経済活動と法、効率と公正を考える」

 第1限は横田亮弁護士の担当で,中高生もトラブルに巻き込まれることが多いインターネットオークションを題材とし,私法の基本である契約と、契約が経済活動において果たしている役割、契約・市場経済における効率と公正について考える授業を行いました。
 前半では,インターネットオークションも売買契約の一種であることを前提に,基本となる契約の成立,意思表示について学習しました。物の売買は日常生活で当たり前のように行っていますが,契約はどのように成立するのか,何気なく行っている契約について,じっくりと考えてもらいました。
 後半では,中高生にも馴染みのあるアイドルグループのコンサートチケットを題材に,オークションではどのように契約が成立するのか,またオークションで想定し得うるトラブルについて,授業前半で学習した契約の基本から考えてもらいました。
 最後に,実際に販売されている野球のチケットとその注意書きをヒントに,転売行為がなぜ禁止されているのか,公正の観点からも考えてもらいました。
 参加者からは,「オークションはお金をどんどんつり上げて落札するというシンプルなものに思えていましたが,その背景に法律に基づくルールがたくさん隠れていて,面白いなと思いました」等,法の原理原則をふまえて実社会生活の法律関係を考えるという,法教育の目的が達成できたことが実感できる感想が多数寄せられました。また,学習指導要領にも法教育を取り扱うことが明記されていますが,「高校の授業で習ったことが,こういったところで役に立つことに喜びを感じた」と,ジュニア・ロースクールと学校教育がリンクしていることも特筆すべきかと思います。

3 第2限 「法に基づく公正な裁判の保障とは」

 第2限は,原智紀弁護士の担当で,下級審,最高裁で判断の分かれた有名な刑事事件を題材に,刑事模擬裁判を実施しました。裁判官,検察官,弁護人,被告人,証人といった関係者は全て岡山大学法学部の学生に演じてもらいました。また,参加者の中から何人か裁判官・裁判員役になってもらい,実際の刑事裁判と同様,証人役,被告人役に質問する機会も設けました。
 前半では,原弁護士が講義形式で刑事裁判の概要を説明し,起訴状一本主義等日本の刑事裁判制度と適正手続について参加者に学んでもらいました。
 後半では,実際の事件をアレンジしたシナリオを用意した上で,模擬裁判を行いました。題材は「勘違い騎士道事件」として有名な事件で,空手有段者の外国人が,女性が被害者の男性に介抱されているところを女性が襲われていると思いこみ,これを止めようとしたところ,被害者がファイティングポーズをとっているものと勘違いし,危険を感じとっさに回し蹴りをしたため,被害者が亡くなってしまったという事案です。
 時間の制約から冒頭手続,証拠調べ(証人尋問・被告人質問)のみ行いました。裁判官・裁判員役の中高生からは積極的に質問がなされ,鋭い指摘も複数見受けられました。
 最後に,参加者には被告人は有罪か無罪どちらの結論に至ったか発表してもらいましたが,どちらの答えが正しいかどうかではなく,そのような結論に至った道筋が大事であることを再認識してもらいました。
 参加者からは,「公平な目で裁判を見るという点で,裁判だけではなく,身近なことにも公平な目で物事を見ていきたいと思いました」と,今回取り扱った刑事司法のみならず,社会事象に幅広く法教育を通じて身につけた素養を生かしたいとの感想が寄せられました。また,「今日学んだことをふまえ、日頃新聞などを見て、自分だったらどう判断するか考えるようにしたい」との感想もあり,ジュニア・ロースクール参加者には,法と社会に広く興味・関心を持ってもらうことができたと実感しました。

4 行事が終わって

 終了後アンケートを行ったところ,参加者からは概ね好評の意見をいただきました。若干教材の詰め込みすぎは課題として残りましたが、今回の経験を踏まえ,さらに次回ジュニア・ロースクールはより充実した内容にしたいと考えております。

(本報告は、岡山弁護士会所属の石田美祢弁護士作成の報告書を使用させていただきました。)