岡山大学 法学部

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第8回岡山弁護士会・岡山大学法学部共催 ジュニア・ロースクール岡山 報告

第8回ジュニア・ロースクール岡山開催について(報告)

一 行事の概要

 1 主 催 岡山弁護士会・岡山大学法学部 共催
 2 後 援 岡山県教育委員会・岡山市教育委員会・倉敷市教育委員会
 3 日時・場所
   平成24年11月17日(土)
   岡山大学 一般教育棟D棟6階大会議室
 4 対 象 中学3年生、高校生

二 開催結果の概要

 中・高校生の参加者: 中学生4人、高校生20人、計24人
 一般観覧者    : 11人
  (金沢大学より大学教員1人、大学生10人)
  4人程度のグループに分かれて意見を出し合い考えました。各グループには、岡山大学法学部・法科大学院学生及び大学院教育学研究科学生(23名)が助言者として参加しました。

 まず、小山正善岡山大学法学部長より開講のあいさつが述べられ、引き続き授業に入りました。

第1限(13:00~14:45)
『「一票の格差」~議員定数不均衡訴訟を基にして投票価値の平等を考える』

 岡山弁護士会県民ネットワーク委員会副委員長・日本弁護士連合会市民のための法教育委員会委員である原智紀弁護士の指導により、新聞報道でも話題となっていた、衆議院議員の選挙区割りの変更、いわゆる「一票の格差」を素材として、単純化した架空の説例を利用し、その考え方、問題点を考えてもらい、ダイレクトに『「公正」とは何か』を学習する授業を行いました。
 授業のイントロダクションとして、現在の日本の選挙制度についての知識を再確認してもらいました。そして、選挙の原則としてあげられるいくつかの内容について、パズル形式の設問を通じて確認してもらい、一票の格差が選挙の原則のうちの平等選挙にかかわることを理解してもらいました。
 次に、一票の格差がなぜ問題なのかを、単純化した架空の説例(生徒数に差のある学校から1名ずつ代表者が選ばれ、代表者により学校対抗のスポーツ大会の競技を決めるとき、一番生徒数の多い学校の代表者の意見が反映されなかった。)を基にして、参加した生徒に問題点がないか、検討をしてもらいました。
 その一方で、一票の格差をなくすことによる少数者の意見が反映されないのでは、という視点も踏まえて、前提を変えた説例(今度は、代表者の数が生徒数の一定の人数に応じて定まり、一番生徒数の少ない学校の意見が反映されない。)場合の問題点を参加生徒に検討してもらいました。
 上記の両極端な説例の検討をした後、さらに、最高裁判所の裁判例で問題があるとされた「一人別枠方式」を踏まえた説例(生徒数の一定の人数に応じて代表者の人数を定めるものと、それとは別に学校ごとに1名の代表者の枠を割り振る)を検討してもらい、公正な代表者の選出をどうすればよいのか検討してもらいました。
 授業実施後、参加した生徒から、思ったより難しくなく、選挙に対する関心が高まったという声を聞きました。
 なお、実施日直前に衆議院議院の解散があったため、まさに時事的なトピックを取り上げた内容となり、国民の政治参加のあり方等への関心が高める一助になったものと思われます。

第2限(15:00~16:45)
『民事模擬仲裁~ある自転車事故での公正な解決を考える』

 岡山弁護士会県民ネットワーク委員会委員平井創介弁護士と佐々木智英弁護士の指導により、自転車事故を素材にして、民事模擬仲裁というADR(裁判外紛争解決手続)において、加害者と被害者のそれぞれの言い分を聞き、その利害を調整し、紛争の公正な解決を図る方法を検討するという授業を実施しました。
 まず、最初に、事故が発生した時にどのような責任が生じるのか、また、どのような損害が発生するのかを質疑応答を通じて生徒に理解してもらいました。
 そして、解決方法として、ADR(裁判外紛争解決手続)という手続があることを紹介し、模擬仲裁として、両当事者の言い分を聞いてもらいました。この模擬仲裁では、当事者(原告、被告)と仲裁人の役は岡山大学法学部の学生に演じてもらいました。

 模擬仲裁で両当事者の言い分を聞いてもらった後で、グループごとに、両当事者の過失(悪い点)を議論してもらい、過失割合がどの程度になるか検討してもらい、最後に発表してもらいました。
 グループ発表後、講師役から今回の事件の内容についてまとめてもらい。「手続的正義」の重要性についても講義して終了になりました。
 アンケートをみると、お互いの言い分を聞いてもどちらが悪いということが言えず判断が難しかったということで、単純に割り切れない事件で、難しかったという内容もありましたが、グループ内で自分の意見と異なる意見も出たことや、ディベートのようになり楽しかったという意見も多くありました。授業全体を通じて、紛争が生じた場合の解決方法や、学習指導用にも謳われている「対立と合意」ということについて考えてもらえる授業を実施できたものと思われます。

 最後に、横田亮平成24年度岡山弁護士会副会長(中国地方弁護士会連合会市民のための法教育委員会委員長)より授業の目的の説明を兼ねた終了のあいさつが述べられ、無事に全日程を終えました。

三 行事を終えて

 終了後に、参加した生徒からアンケートを回答してもらったところ、参加者からは概ね好評の意見をいただきました。授業進行で予定より時間がかかり、予定終了時間を若干延長するということもありましたが、今回の経験を踏まえ、次回の第9回ジュニア・ロースクール岡山ではより充実した内容にしたいと考えております。

(岡山弁護士会県民ネットワーク委員会委員長 佐藤弘一)