研究内容

 

 


研究の一例を下に示します。

「細菌側の研究」「細菌の利用研究」

 


細菌側の研究

マイクロバイオームの研究

私たちの体表や腸管などに多くの細菌が生息していることがわかってきました。腸管には、1000種類、100兆個もの細菌がいます。私たちは、常在菌叢の実態を明らかにし、疾患との関連を調べ、どの細菌が疾患または健康に重要なのかを明らかにすることを目的とし、研究を進めています。臨床とのコラボレーションし、様々な疾患と常在細菌叢との関係に関して調査しています。

ピロリ菌の研究

ピロリ菌は、胃に長期に生息する過程で、一部のヒトに胃炎・胃潰瘍・胃MALTリンパ腫、胃癌などを発症させる細菌として知られています。近年、本菌において薬剤耐性が問題となっており、薬剤耐性菌の対策が必要となっています。そのため、ピロリ菌によるガンを未然に防ぎための研究は不可欠です。私たちは、ピロリ菌の発がんメカニズムの研究やピロリ菌の新規除菌法の研究開発を行っています。

薬剤耐性菌の調査

抗菌薬を使い続けていると、細菌の抗菌薬に対する抵抗力が高くなり、薬が効かなくなります。このように、薬への耐性を持った細菌のことを「薬剤耐性菌」といいます。イギリスの経済学者によると、2050年までに現状に対して何もしない場合、癌で死亡する数を超える1000万人が年間死亡すると推計されています。今後、高齢者が増える日本では特に、薬剤耐性菌による感染が問題となると考えられます。そのため、薬剤耐性菌の現状を把握するために、私たちは臨床とコラボレーションし、薬剤耐性菌の調査を行っています。

細菌の利用研究

感染症内科学への応用開発

「ファージ療法」とは、細菌ウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)の殺菌作用を利用・応用した細菌感染症治療法です。上記でも述べましたが、近年、薬剤耐性菌が問題となる現状があり、化学療法(既存の抗菌薬を使った感染症治療法)の代替えとなるような治療法が求められています。ファージ療法は、最も期待される治療法の1つです。私たちは、ファージ療法の研究開発を精力的に行っています。具体的には、治療用ファージの探索、ファージ分子を使用して治療用ツールの創出、動物実験を行っています。ブドウ球菌、コリネ菌、腸球菌、B群連鎖球菌、アシネトバクター菌、ピロリ菌、緑膿菌を標的として研究を行っています。

再生医療への応用研究

コラーゲンは、細胞外マトリックスの主要なタンパク質です。不溶性の膠原線維を形成して感染巣拡大のバリアとなっています。ガス壊疸菌群は、「コラゲナーゼ」を産生して結合組織を破壊し、感染を急速に拡大します。その際、本酵素はPKDドメインとコラーゲン結合ドメイン(CBD)からなるアンカーにより膠原線維に結合して水解します。このアンカーと成長因子を連結した融合タンパク質を作製し、高密度コラーゲン膜や脱灰骨に結合して骨表面に移植したところ、有意に多くの骨新生が誘導されました(特許第5512887号, US 9,248,164, EP 2,708,246)。神経や血管などの組織再生による臨床応用を目指して、前臨床研究を進めています。

麻酔学への応用研究

ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、食中毒の原因となるボツリヌス毒素を産生する細菌です。この毒素は神経毒であり、生体物質の中では最も毒性が強いとされています。私たちは、この毒素の生理学的機能を詳細に解明し、鎮痛剤として利用するための応用研究を行っています。