岡山大学
歯科麻酔学(歯科麻酔科)

Department of Dental Anesthesiology,Okayama University Dental School,Okayama,Japan
TOP

診療

教育

研究

臨床研究
学会報告
スタッフ紹介
関連医療機関
NEWS
LINK

「歯科麻酔学」とは

 「歯・口腔」は、栄養の入り口としての役割、社会生活の営みに重要である会話の役割、審美面での役割など、身体的健康のみならず精神的健康に重要な役割を持っています。「歯学」は歯・口腔の健康を保持増進することを目的としていますので、全身の健康保持に深く関わった学問と言えます。「歯科麻酔学」は歯学の一分野として確立されたもので、他の歯学の分野と同様に、目的は歯・口腔の健康を保持増進することです。歯学の中で歯科麻酔学が特別に担当しているのは、歯科における「ストレス」と、そのストレスに対する「制御」に関する分野です。具体的には、歯科臨床の場で「安全」「安心」「快適」を提供できるようにすることが、歯科麻酔学の役割です。
 歯科は古来より、ストレスフルと認識されてきました。それは、視覚的に絵画から知ることができます。抜歯の風景は絵画の題材としても多くあげられていますが、常に恐怖に満ちた患者の様子が描かれています。20世紀の医学最大の発見のひとつであるといわれている「麻酔(全身麻酔)」が、当初抜歯で多く試みられたことからも、歯科は「ストレス制御」と強く関連していることは明らかです。
 ストレスとその制御は、歯学にとどまることではありません。ストレス社会といわれている現在社会においては、健康とストレスとは密接に関連しており、歯科麻酔学の発展によって、直接的に、全身の健康保持増進に貢献することができると考えています。その意味においても、歯科麻酔学は「健康科学」の一分野として重要な役割を担っています。

「歯科麻酔学」で学ぶこと

 「歯科麻酔学」の位置づけを理解するために、まず、歯科医療を取り巻く社会的背景、言い換えれば、歯科医療に対して社会が何を求めているかを学ぶ必要があります。医療に限らず、すべての社会活動で求められているのは「質(Total Quality)の保証(Management)」であり、医療では「医療の質の保証」がキーワードになります。医療における質には、各専門分野での「知識」、「技術」だけでなく、「安全の確保」、それによる「安心感の提供」、さらには「快適な内外環境」も重要な因子です。歯科麻酔学による「ストレス制御」は、「安全」「安心」「快適」に直結することから、歯科麻酔学では歯科医療の質を保証するための基盤を学ぶことになります。
 歯科麻酔学には、基礎学問として、「生理学」の知識が必要です。さらに、薬物を用いたストレス制御を学ぶためには、「薬理学」の知識が必要です。それらを臨床的に応用した「臨床生理学」「臨床薬理学」が、それぞれの講義内容の基本になります。
 生体への刺激(ストレッサー)に対する、生体の反応がストレス(反応)です。身体的ストレス反応と精神的ストレス反応に分類できますが、特に身体的ストレス反応には、循環動態、代謝、内分泌などの変動を伴うことから、過剰なストレス反応は循環器および代謝・内分泌疾患などの基礎疾患の増悪を招くことがあります。歯科診療がストレスフルであることから、これらの基礎疾患が歯科治療中に急激に増悪することは少なくなく、逆にストレス反応を制御することは、歯科医療の安全を確保することにつながります。これが「歯科全身管理」です。歯科麻酔学では、身体的ストレス反応の評価とその制御について学びます。
 歯科麻酔学では、ストレス制御薬として、「麻酔薬」を主に取り上げます。麻酔薬は、単に、鎮痛、無意識を作り出す薬物ではなく、疼痛ストレスの制御、不安・恐怖による精神的ストレスの制御をもたらす、ストレス制御薬として位置づけ、その薬理作用と臨床応用について教授します。
 歯科臨床において歯科麻酔専門医は、平成18年4月現在で厚生労働省が広告を認可している、わずか4つしかない歯科医師の専門医(口腔外科専門医、歯周病専門医、歯科麻酔専門医、小児歯科専門医)の一つとして、その専門性は公に認められています。専門医としての高度な診療ができる歯科医師、歯科麻酔学の研究をさらに発展させてくれる研究者、またその教育者を育成することも役割の一つですが、歯科麻酔学を学ぶことによって、安全、安心、快適を提供できる地域歯科医師を育成し、国民の歯・口腔の健康、さらには全身の健康に貢献してもらうことが、より大きな役割であり、教育の柱であると考えています。
 国際的には、歯科麻酔学の分野では、日本は最先端に位置し、基礎的にも臨床的にも海外を圧倒しています。このことは国際学会(国際歯科麻酔会議IFDAS)のプログラムからも知ることができます。この点は、米国が最先である多くの他の分野と異なる点で、すでに日本が世界の歯科麻酔学をリードしており、日本での発展がそのまま世界の歯科麻酔学の発展になっているのです。世界で最先の基礎的および臨床的に最先の知識、技術、理念を持っている日本での教育が、世界で最先の教育であると確信しています。また、世界で基礎的および臨床的に最先の「歯科麻酔学」が、十分に、的確に修得され、印象的に保持される教育内容、方法についても、常に検討を重ねていきたいと考えております。

教育理念

 歯科医療、研究、教育を通じて、国民のみならず人類の健康保持増進に貢献する医療人、研究者、教育者を育成することが、歯科麻酔学の教育の目標ですが、健康に貢献するだけでなく、それをさらに発展させて、常に「社会貢献」を念頭においた、「良き社会人」になることを強く期待します。それは、勝ち組として自分の成功に溺れ、自尊の立場で社会に向き合うのではなく、本当の強者として、社会の一構成員として、社会の全体的な向上に貢献できる思考を持つことです。歯科麻酔学の教育では、行間に「社会貢献」が常に伝わるよう努めたいと考えています。

Copyright(C) Department of Dental Anesthesiology,Okayama University Hospital,Okayama,Japan,All Rights Reserved.