国立大学法人 岡山大学

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学生がキャラクターに成り切って、物語を創作!? 集中講義「アート思考とナラティブデザインをベースにしたコミュニケーション論」を開講

2023年10月13日

 本学大学院教育学研究科寄付講座の国吉康雄記念・美術教育と地域創生講座では、9月20、21、23、24日の4日間、「アート思考とナラティブデザインをベースにしたコミュニケーション論」と題した集中講義を行いました。
 この講義は「テーブル・ロール・プレイング・ゲーム(TRPG)」というゲーム形式で行われ、「他者に敬意を表し、理解し合うことを努めて行い、協力、協働する大切さを確認すること」を目的としています。
 TRPGは、受講生がプレイヤー、講師陣やティーチングアシスタント(TA)がメディエーターと呼ばれるゲームの進行役となって机を囲み、会話をしながらゲームを進めます。プレイヤーがダイスを振ることで、基本的な架空のキャラクターと性格や能力設定が割り振られます。その後、ゲームの世界観やあらかじめ用意されたいくつかの「物語」に従って、自分で膨らませたキャラクターに成りきり、物語を創作していきます。
【物語の詳細、この講義の背景は、講師である同講座の伊藤駿助教(特任)の解説をご覧ください。】
 物語の創作に先立って、講師陣から多くの情報と物語の理解やキャラクターの創作手法が提供。また、事前課題として、実際のアニメ作品を視聴し、込めたメッセージを考察することで創作手法を学習。受講生は自身に与えられたキャラクターを膨らませていきました。
 講義で使用する物語、世界観、ゲームのルールはすべてオリジナルであるため、講師陣と受講生が一緒に「言の葉の探求者たち」というタイトルで物語の創作を開始。大学生らしい取材や調査を試みる大切さや、創造性をよりどころにした言葉と、批評性を軸にした言葉が応酬するクリエイティブな「場」となりました。
 講義では4日間で、受講生がそれぞれに制作したキャラクターの特性に合わせ、複数の班に分かれて進めました。当然、キャラクターの性格はまちまちで、班ごとに進行も異なりますが、講師陣やTAから「魅力的な行動、選択」が繰り返し問われ、キャラクターを成長させました。
 TRPGは、通常のゲームのように効率や効果を優先するプログラムが介在しないため、受講生は、自身が制作したキャラクターとして参加するゲームの中で、講師陣から提示される情報や状況を分析し、より現実に近い対話や選択することを求められ、メディエーターだけではなく、同じチームでプレイをする他の受講生からも、度々「それはキャラクターとしての判断ですか?プレイヤーとしてのあなた自身の意見ですか?」と問われていました。
 ゲームはフィクションですが、受講生がキャラクターを通して直面する様々なアクシデントは、現実社会でも形や言葉を変えて起こりうるものがあらかじめ設定されています。こうした状況に受講生は、キャラクター同士で対話を繰り返し、本人のアイデンティティで議論しながら解決を試みました。時として対話がスムーズに進む場合もあれば、現実と同じように意見が食い違うこともあります。決断を後回しにすれば、その影響が後になって現れたり、選択の結果、次のアクシデントや思いもよらない幸運を招くことも。受講生たちは、選択のミスを後悔したり、ミッションの可否に一喜一憂したりしていました。こうした体験は、実社会での選択や、解決が困難とされる社会課題に、一人ひとりが当事者意識を持って向き合い、取り組むことなどを試みる疑似体験の場の機能を果たしています。
 集中講義を終えた坂口明輝人さん(工学部1年)は、「行動一つ一つにどういう意思があるのか、普段の何気ない行動もキャラクターに置き換えてみようと思いました。講義中は、キャラクターの生き様に影響する部分があるので行動や考え方、言動一つ一つの意味を考えることが新鮮で、面白かったです」と振り返りました。
 受講生で、このゲームの開発者でもある孝壽真治さん(大学院環境生命自然科学研究科1年)は、「現実の世界でのディスカッションでは、変なことは言えないとか、有意義なことを言わなければならないと考えてしまい、なかなか自分の意見を押し出すことが難しいが、この講義では、キャラクターという存在を挟むことで、自分を出すというハードルを取っ払ってキャラクターとして考えや思いを表現できるので、ディスカッションのトレーニングになると思います。自分自身、コミュニケーションが得意な方ではないので、このゲームを通して自分自身の再発見や振り返りができたと思います」と話してくれました。
【その他の受講生の声はこちらからご覧いただけます。】
 こうして得られた講義の進行やキャラクターの個別の特性は、分析され、今後のゲームや講義の運営に反映されます。この内容は3学期、集中講義「アート思考とナラティブデザインをベースとしたコミュニケーション論3」で引き続き開講予定です。

参考URL
プログラム概要動画
言の葉の探究者たち特設ホームページ

【本件問い合わせ先】
大学院教育学研究科 国吉康雄記念・美術教育研究と地域創生講座
助教(特任) 伊藤駿
TEL:086-289-5807

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