国立大学法人 岡山大学

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鉄系超電導体の高温超電導実現背景の解明

2012年01月12日

 岡山大学大学院自然科学研究科先端基礎科学専攻・鄭国慶教授(低温物性物理学),川崎慎司講師(同)ならびに岡利英大学院生(同)らの研究グループは,鉄系高温超電導体の超電導実現条件を明らかにした。鉄系超電導体は2008 年に日本で発見されたばかりで,その基礎物性は未だ不明点が多い。研究グループは高品質の試料で詳細な実験を行い,鉄の電子が帯びる磁気が,高い超電導転移に有利に働くこと明らかにした。この成果によって,送電線などに応用が期待できる高温超電導の研究に進展が望める。この結果は,米国物理学会速報誌Physical Review Letters 誌において近く公表される。
 鉄系高温超電導体(注1)に核磁気共鳴法(NMR)(注2)を用いて高温超電導発現の背景となる電子状態が銅酸化物高温超電導体と類似していることを明らかにしました。鉄系高温超電導2008年に東京工業大学の細野秀雄教授らによって発見されました。これまでに銅酸化物高温超電導体に次ぐ高い超電導転移温度55 ケルビン(マイナス218℃)をもつ物質が発見されており,現在室温超電導を目指して,世界中の研究者によって物質開発競争が繰り広げられています。しかし,未だ高品質の試料作製技術が確立しておらず,これまでは元素置換によって超電導転移温度がどのように変化するのか(電子相図注3)やどのような仕組みで超電導が実現しているかは,明確ではありませんでした。そこで,岡山大学の研究グループは,現時点では世界最高品質の試料を用いた詳細な実験を行い,鉄系超電導体の電子相図や高温超電導実現背景が,銅酸化物高温超電導体と類似したものであることを初めて明らかにしました。特に,電子が帯びる磁気が超電導に有利に働くことを明らかにしたことが以下の観点から注目されます。①今後の鉄系超電導体開発の指標となる。②鉄系超電導の転移温度が今後さらに上昇し得ることを示す。今後高温超電導の理解と,より高い転移温度をもつ超電導の開発に飛躍的な進展をもたらすと期待されます。
 この研究成果は,岡山大学大学院自然科学研究科先端基礎科学専攻の大学院生岡利英が指導教員・鄭国慶教授(低温物性物理学)と川崎慎司講師(同)の指導の下,核磁気共鳴実験を行った結果です。実験に用いた高純度のランタン鉄砒素酸化物高温超電導体は中国科学院物理研究所の結晶育成グループによって育成され,提供されたものです。

詳細は報道発表資料をご覧ください。

<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科
川崎慎司
(電話番号)086-251-7803

(12.01.12)

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