本学、株式会社廣榮堂、MS&ADインターリスク総研株式会社による「きびだんごカーボンフットプリント(CFP)表示実証研究」が9月1日から始まり、倉敷美観地区にある廣榮堂倉敷雄鶏店にて展示・販売が行われています。表示実証研究では、本学学術研究院社会文化科学学域(経済)の天王寺谷達将准教授の研究室とMS&ADインターリスク総研が共同で作成したアンケート調査のほか、同研究室の経済学部生によるインタビュー調査が実施されます。9月5日には、本学経済学部の学生が現地に立ち、多くの観光客にCFPの意義や製品ごとの違いを説明し、インタビュー調査・アンケート調査を行いました。
今回、廣榮堂の商品である「元祖きびだんご」と「むかし吉備団子」について、原材料生産から製造、販売に至るまでのCO2排出量を算定した結果、「元祖きびだんご」は1箱(15個入り)あたり766 g-CO₂e、「むかし吉備団子」は638 g-CO₂eで、約17%の差があることがわかりました。展示ポスターを見て、むかし吉備団子の方がCFP値が低いことを知った観光客の方々は、その数値差だけでなく「木箱の利用」や「岡山県産もち米の使用」といった具体的な背景に強く関心を示し、「パッケージの違いが環境に影響することを初めて知りました」「地元の素材を使うことが環境に優しい選択になるのは面白いですね」といった感想が寄せられました。
学生たちは来店者への説明に加えて、インタビューやアンケートを通じてCFP表示が生み出す購買行動への影響を探りました。「環境負荷が低いと聞くと、せっかくならそちらを選びたいです」「旅行のお土産選びに新しい基準ができました」と答える方も多く、環境配慮の数値が行動に結びつく可能性が垣間見えました。
活動に参加した学生は「観光客の方々が熱心に耳を傾けてくださり、自分たちの説明で意識が変わる瞬間を感じました」と振り返りました。また、別の学生は「温暖化の影響については小学生から知っていましたが、こうして数値化することで、環境の話が一気に身近になることを実感しました」と語りました。
廣榮堂の小西祐貴社長室室長は「伝統的な和菓子に新たな価値を加えられる取り組みだと感じています。学生の皆さんの新鮮な視点や観光客の声を参考にしながら、今後の商品開発や発信に生かしていきたいです」とコメントしました。
さらに、今回のCFP算定を主に担当したMS&ADインターリスク総研株式会社の浅井良純上席コンサルタントは「CFP表示は、取引先や消費者に環境価値という新たな選択肢を提供することで、商品やサービスの付加価値を高めるものです。今回の実証をモデルに、他の中小企業にも広げていければと考えています」と述べ、実証研究の意義を強調しました。
学生・企業・研究機関が連携した今回の活動は、観光地を訪れる人々にとっても環境問題を自分事として考える契機となり得ます。CFP表示実証研究は10月31日まで続き、アンケート調査は毎日、学生による説明活動やインタビュー調査は金曜日の14時~16時(9月12日を除く)に行われる予定です。伝統菓子を題材にしたこの挑戦は、地域に根差した脱炭素経営を広げていく第一歩として注目されています。
○カーボンフットプリント
カーボンフットプリントとは、製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出されるGHGの排出量をCO2排出量に換算し、製品に表示された数値もしくはそれを表示する仕組みのこと。
出典:カーボンフットプリント ガイドライン(経済産業省、環境省)
【本件問い合わせ先】
研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部 舩倉
TEL:086-251-7151
Email: co-creation◎adm.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。
きびだんごにカーボンフットプリントを表示! ~学生と観光客が語り合う脱炭素の未来~
2025年09月09日