本学学術研究院環境生命自然科学学域の野上保之教授と笹埜健斗特定教授(産学共創)は、7月10日、北海道大学で開催された国際会議「XBRL Asia Round Table 2026(XART 2026)」に登壇し、「AI-Readable Trust Infrastructure」をテーマに発表しました。
XBRLは、企業の財務情報やサステナビリティ情報を、コンピュータで検索・比較・分析しやすい形式で表現する国際的なデジタル報告標準です。XARTは、アジア地域におけるデジタル財務報告の発展を目的に、政策担当者や規制当局、金融市場関係者、企業報告の専門家らが一堂に会し、XBRLを活用したデジタル報告やサステナビリティ情報開示、AIの活用、規制の動向などを議論する国際会議で、 今回のXART 2026は7月6日から10日にかけて北海道大学でハイブリッド形式により開催されました。
今回の発表は、本学が「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」で推進する「イノベーション創出によるWell-being社会の実現」に向けた取組の一環です。両教授は、安全なデータ共有やAI・サイバーセキュリティ、地域共創、社会的インパクトの創出といったJ-PEAKSの取組を紹介したうえで、これらをAI時代の企業報告の信頼性確保につなげる構想を示しました。
生成AIの普及に伴い、企業報告を人間だけでなくAIが読み取り、要約・分析する場面は今後ますます増えていくと見込まれます。しかし、AIが情報を技術的に「読める」ことと、その答えを利用者が「信頼できる」ことは、必ずしも同じではありません。
そこで両教授は、AI時代の企業報告を支える信頼基盤として、「Data Trust」、「AI Security」、「Social Impact」の三つの層からなる枠組みを提示しました。
「Data Trust」では、データの真正性や来歴、検証可能性の確保を、「AI Security」では、正確な情報の取得や回答の根拠付け、出力内容の検証といった、AIによる処理全体の安全性の確保を取り上げました。そして「Social Impact」では、公正な市場やサステナブルファイナンス、地域のWell-beingなど、AIの利用が社会に及ぼす影響にまで目を向ける必要があると説明しました。
当日は参加型ツール「Slido」も活用し、AIが企業報告やXBRLデータを読む際に鍵となる信頼のあり方や、財務情報・サステナビリティ情報を要約する際のリスク、XART 2027に期待する成果などをテーマに、参加者と双方向で意見を交わしました。
さらに、2027年に岡山大学で開催予定の「XART 2027」を見据え、「Observe(観測)」、「Secure(保護)」、「Validate(検証)」、「Create Impact(社会的価値の創出)」の四つの行動を掲げ、信頼できるAI可読型報告に関する原則やリスクマップ、実証プロトタイプ、アジア太平洋地域の連携ロードマップなどを成果の候補として提案しました。
野上教授は、「AIモデルだけでなく、データの取得、アクセス権限、外部ツール、処理履歴、出力検証まで含めたシステム全体の安全性を考える必要がある」と述べました。
また、笹埜特定教授は、「データ、AI、安全性、社会への影響を一体として捉え、2027年に岡山大学で開催予定のXART 2027に向けた国際共創を岡山から進めていきたい」と今後の展望を語りました。
本学は今後も、J-PEAKSの取組を基盤に、XART 2027の開催に向けた国際連携を深めるとともに、国内外の研究者や企業、金融機関、標準化団体などと手を携えながら、AIが企業報告を安全かつ信頼できる形で活用するための研究と社会実装に取り組んでいきます。
【本件問い合わせ先】
研究・イノベーション共創機構
Email: co-creation◎adm.okayama-u.ac.jp
「AIが読める」から「AIを信頼できる」へ―国際会議XART 2026でJ-PEAKSの取組と次世代の信頼基盤を発信
2026年07月16日