本学学術研究院環境生命自然科学学域の松田裕貴講師の研究グループは、語らい座大原本邸(国指定重要文化財 旧大原家住宅)、岡山県立倉敷青陵高等学校放送部との連携により、生成AIを活用した日本語・英語対応のバーチャルキュレーター「Vir-Curora」を試作しました。本研究の成果は、8月22~24日に開催された国際会議「SNPD2026」で発表されました。
語らい座大原本邸は、300年以上の歴史を持つ大原家の旧邸宅で、大原家の歴史や建築、文化活動などに関する貴重な知識が蓄積されています。一方、こうした施設固有の知識の多くは専門家による解説を通じて伝えられており、デジタル技術を活用した記録・継承が課題となっています。
本研究では、倉敷青陵高校放送部の生徒が大原本邸のキュレーターにインタビューを行い、建物の構造や展示物、各空間にまつわる歴史などについて質問し、その内容を音声・映像として記録しました。研究グループは、収録した約180分の音声データを文字化し、質問と回答、場所、展示物などの情報を関連付けたデータベースを構築しました。
このデータを基に、生成AIと検索拡張生成(RAG)技術を組み合わせた対話型システム「Vir-Curora」を開発しました。利用者が質問すると、インタビュー記録から関連情報を検索し、その内容に基づいて回答を生成します。日本語と英語に対応しており、利用者が見学している場所や展示物に応じた案内も可能です。
また、生成AIが誤った情報を生成することを抑えるため、根拠となる情報が不足している場合には回答を控え、後から専門家が情報を追加できる仕組みを採用しています。文化財への機器設置や構造変更を必要とせず、保存にも配慮したシステムとなっています。
本研究には、松田研究室で3か月間のインターンシップを行ったタイ・カセサート大学のPhasit Ruangmakさん(学部3年生)も参加し、松田講師や本学学生とともにシステムの開発・検証に取り組みました。
研究成果は「Vir-Curora: Prototyping a Bilingual Retrieval-Augmented Virtual Curator from Oral Interviews at a Cultural Heritage Site」と題する論文にまとめられ、国際会議「The 34th IEEE/ACIS International Conference on Software Engineering, Artificial Intelligence, Networking and Parallel/Distributed Computing(SNPD2026)」で発表されました。論文には倉敷青陵高校放送部の生徒も共著者として参加しています。
参加した高校生からは、AIやデジタル技術に触れる貴重な経験になったことや、留学生との交流を通じて英語によるコミュニケーションの重要性を実感したことなどの感想が寄せられました。
本研究は、高校生による地域文化の取材活動を大学のAI研究につなげ、国際会議での成果発表にまで発展させた取り組みです。地域の文化施設が持つ専門的な知識と大学の情報工学・AI技術を組み合わせることで、文化資源の新たな記録・活用の可能性を示しました。
なお、本取り組みの連携・調整には、本学が事務局を務める産学官連携組織「おかやまデジタルイノベーション創出プラットフォーム(OI-Start)」も協力しました。OI-Startでは、今後も大学と地域、高校、企業などの連携を促進し、新たな研究や地域の価値創出につながる取り組みを支援していきます。
【本件問い合わせ先】
おかやまデジタルイノベーション創出プラットフォーム(OI-Start)事務局
(岡山大学 自然科学系総合研究棟 6F 第1区画)
TEL:080-7178-7277
E-mail:oi-start◎okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。
大原本邸の歴史や文化を生成AIで伝える!日英対応バーチャルキュレーターを試作 ~倉敷青陵高校との連携による研究成果を国際会議で発表~
2026年10月19日