岡山大学学術研究院教育学域の入江隆教授の研究室は、9月から10月にかけて岡山県立玉島高等学校において、同校1年生を対象に、VR(Virtual Reality:仮想現実)を活用した物理学習を実施しました。
本取り組みでは、高校の「物理基礎」で学ぶ熱に関する内容を題材に、通常は直接見ることのできない粒子の配置や動きをVR空間で可視化し、約50人の生徒が体験しながら学習しました。
VR空間では、固体・液体・気体など、それぞれの状態における粒子の配置や動きの違いを観察することができます。生徒たちはVRヘッドセットを装着し、仮想空間の中を自ら操作しながら、粒子の動きや物質の状態について、自分のペースで学習を進めました。
大学側からは、入江教授のほか、大学院修士課程のMuhammad Zahranさん、学部3年の学生が参加し、生徒のVR体験や学習をサポートしました。
VR体験後には、入江教授ら研究室メンバーが各グループの生徒にインタビューを行い、体験を通して感じたことや、学習内容について意見を聞きました。
参加した生徒からは、「自分が思い込んでいたことについて、VRで実際の現象を見ることで理解できた」、「VRだと手順が分かりやすかった」、「動画を見るより分かりやすかった」などの感想が聞かれました。また、VRでの体験を通して、粒子の動きをより実感できたとの声もありました。目に見えない粒子の世界を仮想空間の中で体験することで、教科書の文章や図だけではイメージしにくい物理現象について考える機会となりました。
入江研究室では、VRなどのデジタル技術を教育に活用する研究を進めています。今回使用したVR教材は、これまで同研究室が国内外の研究者と進めてきた研究成果を踏まえて発展させたものです。
これまでの研究では、物質の固体・液体・気体の状態について、粒子の配置や動きをVR空間で可視化することで、学習者が抽象的な現象を視覚的、体験的に捉えることができる教育用VRシミュレーションについて研究してきました。また、VRを教育に活用する際には、没入感だけではなく、視覚的・技術的なデザイン、学習内容との整合性、実際の教育環境で利用できる技術的な使いやすさなどが重要であることを明らかにしています。
今回の玉島高校での取り組みでは、こうした研究成果を高校の物理教育の現場へと展開し、生徒たちがVRを用いて物理現象を学ぶ機会を提供しました。
本取り組みの実施にあたっては、岡山大学研究・イノベーション共創機構、岡山半導体研究教育推進委員会(代表:鶴田健二副学長)、おかやまデジタルイノベーション創出プラットフォーム(OI-Start)が支援しました。OI-Startでは、大学の研究成果やデジタル技術を社会や教育の現場につなげるとともに、デジタル分野に関わる人材育成の取り組みを推進しています。
本学では今後も、大学における研究成果と学校教育の現場をつなぎ、デジタル技術を活用した教育・人材育成の取り組みを進めていきます。
【参考】
Samsudin, A., Zahran, M., Nugraha, E., Nasbey, H., Sozbilir, M., Abdul Rahman, N. F., & Irie, T. (2026)
“Immersion is not enough: Design quality as the key determinant of perceived effectiveness and usage intention in educational virtual reality”
Computers & Education: X Reality, 8, 100152.
【お問い合わせ先】
岡山大学 学術研究院教育学域 教授 入江 隆
岡山大学 研究・イノベーション共創機構 研究企画戦略室 佐藤浩哉
おかやまデジタルイノベーション創出プラットフォーム事務局
TEL:080-7178-7277
E-mail:oi-start◎okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。
岡山大学教育学域 入江研究室が玉島高校でVRを活用した物理学習を実施~目に見えない粒子の世界をVRで体験~
2026年10月29日